公園はどうやってつくられるのか、考えたことはありますか? 2017年、都市公園法の改正が話題になりました。公園の誕生から約150年、都市公園法の制定から約60年が経過した日本の公園の歴史の中で、公園づくりのあり方はどう変わってきたのか。振り返るとともに、これからの時代はどのようになっていくのか、考えてみました。
日本の公園の歴史
日本ではじめて「公園」という言葉が使われたのは、明治6年。政府が地方自治体に対して「人々が皆楽しめる場として、公園にふさわしい土地があれば申し出るように」というお達し(太政官布達)を公布しました。これによって、寛永寺(上野公園)や増上寺(芝公園)の境内などが、日本初の公園に指定。その後、日本初の洋式公園である日比谷公園など、少しずつ新しい公園も整備されてきました。
昭和31年、都市公園法の制定によって「都市公園」の設置と管理の方針が明確化され、整備目標も設定されました。そこから現在に至るまで、日本の公園はこの都市公園法をベースとして整備されています。
コーヒー文化、3つの波
突然ですが、「サードウェーブコーヒー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ブルーボトルコーヒーに代表される、こだわりの豆を一杯ずつ丁寧に淹れるスタイルのコーヒーで、最近日本でもよく耳にするようになりました。
この“第3の波”に至るまで、コーヒーにはさまざまな潮流がありました。大量生産・大量消費の時代であった「ファーストウェーブ」、スターバックスなどの高品質でさまざまな味を楽しむスタイルが確立した「セカンドウェーブ」、そして今注目されているのが、品質はもちろん生産地から焙煎・抽出までこだわり豆の個性・店舗による個性を追求した「サードウェーブ」です。
私たちは、公園づくりにおいてもこうした3つのステージがあるのではないかと考えました。
公園1.0:量の整備
先に書いたとおり、太政官布達にはじまり都市公園法による整備まで、今の公園の土台は国の主導によって作られてきました。目標は、欧米諸国並の公園数・公園面積の確保。つまり「量」を重視した整備です。そのために都市公園法では公園整備のフォーマットを定め、効率的な整備を進めてきました。
都市公園法制定当時、児童公園(今の街区公園)にすべり台・ブランコ・砂場を設置することが義務付けられていたのもそのひとつ。公園の「三種の神器」などとも言われ、今でも街中の小さな公園でこのセットを見かけることが多いのはそのためです。大人たちとっては懐かしい光景でもあり、その遊びは現代の子どもたちにとっても楽しく日常的なものとなっています。
量を増やす整備は現在も続けられており、昭和35年当時4,500箇所程度だった都市公園は、平成27年度末の統計では106,000箇所を超えています(図1)。しかし、住民1人あたりの面積では欧米の主要都市の水準にはまだまだ到達しておらず、引き続きの整備が進められていくことと思います。(図2)
公園2.0:質の整備
量の整備が進められる一方で、公園の整備や維持管理の主体は国から地方自治体に移っていき、それぞれの地域に合った公園づくりというのが行われるようになりました。それにしたがって、地域の特性・課題などを反映するために公園は多様化し、公園設備などもより質が高く高機能なものが求められるようになってきました。
たとえば、遊びのバリエーションを組み合わせた複合遊具や、災害時に役立つかまどベンチや防災トイレ、高齢化社会に対応して公園で健康づくりができる健康器具など、現代の公園設備はじつに多彩。また、安全・安心への意識はますます高まり、遊び場の安全性や防犯対策なども公園づくりに欠かせない要素となっています。
このような自治体による地域のための公園づくりが、現在のスタンダードではないでしょうか。
公園がいま迎えている状況
いまの日本は少子高齢化が加速し、人口減少の時代に突入。財政に課題を抱える自治体も多く、公園の整備や維持管理にかけられる予算も確保が難しくなってきました。一方で、人々のライフスタイルや価値観はますます多様化し、公園もそれに応えることが求められています。
こうした社会情勢を受け、また公園の量としても一定のストックがなされてきたことを踏まえ、2017年都市公園法が改正されました。これまで整備してきた公園をより効果的に使いこなし柔軟に運営していくこと、そのために市民や民間企業の力を積極的に活用していこうという方針です。
公園3.0:個性の整備 へ
いまや10万箇所を超える公園。そのうち8割が、0.25haを基準とする小さな公園(街区公園)です。量の整備によってストックされてきた、どこの街にもあるこの公共資産「公園」こそ、地域の課題解決のために活かすことができるのではないでしょうか。そのためには、自治体が作ってくれた公園として受け身で構えるのではなく、地域社会もまた公園をつくり、支えるために主体的に関わっていくことが必要です。公園の自分ゴト化、とも言えます。
私たちの考える公園3.0は、多様な人が関わる地域の「共創」による公園づくり。それが、公園の個性を作り出す時代となるはずです。
始まりつつある、新しい公園づくり
使い手が主導となり、地域密着型で公園の再生プロジェクトに取り組んでいる街があります。世田谷区、松陰神社前。このプロジェクトの主催者は、地域の商店街。ポートランド式のワークショップ手法を取り入れながら、地域の子どもから高齢者までが地域の当事者として参加し、街中の小さな公園の活用方法についてディスカッションしています。これまでに行われたワークショップの様子は、PARKFULでも毎回レポートしていますので、ぜひご覧ください。(過去のレポート記事はこちら>)
公園づくりにさまざまな人が関わるために、重要になってくるのが情報の共有や可視化。そこはICTの力が活かせそうです。私たちの運営する公園情報アプリ「PARKFUL」もそのひとつ。日本全国10万箇所の公園をデータベース化し、マップなどで公園情報を閲覧することができます。さらに、ユーザーが公園の写真を投稿できたり、イベントの情報を共有できたりする機能によって、公園情報の管理に市民や企業が参加できる仕組みです。
公園が地域と人をつなぐ場所へ
公園1.0=量の整備、公園2.0=質の整備、による地域の土台づくりも、まだ必要な地域はたくさんあることでしょう。加えて、これからは公園が地域課題解決のためのプラットフォームとして、大事な役割を果たす時代になるはず。そのためには、公園をみんなでつくる「共創」が鍵になるのだと思います。公園3.0の時代へ、私たちのだれもがその当事者です。