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生き物にふれあえる公園づくりに取り組む、桑袋ビオトープ公園

東京都 2018.07.17
公園文化WEB 連動企画

本記事は一般財団法人公園財団の運営する「公園文化 WEB」からの記事提供でお送りします。今回は「公園管理運営『チャレンジ!』しました」のコーナーから東京都足立区の住宅地にある「桑袋ビオトープ」の紹介です。

桑袋ビオトープ公園は、もともとあった足立の自然の姿を取り戻し、生物多様性の豊かな空間を作るために、桑袋小学校跡地に2005年5月に開園しました。この記事では、そんな桑袋ビオトープ公園で、自然解説員として生き物の解説を行ったり、生き物にふれあえるプログラムを提供している、株式会社自然教育研究センターの伊藤正哉さんの「チャレンジ!」をお届けします。

足立区桑袋ビオトープ公園 解説・維持管理 統括責任者 伊藤正哉さん

池の水生生物を守るための “対策” とは?

ー 桑袋ビオトープ公園には、どのような生き物がいるのですか?

伊藤さん:桑袋ビオトープ公園は、もともとあった足立の自然の姿を取り戻し、生物多様性の豊かな空間を作るために、桑袋小学校跡地に開園しました。公園の池の水は、隣接する伝右川から水を引いているため、開園後まもなくハゼやモツゴ、ヤゴ等様々な水生生物が見られるようになりました。一方で、本来この地域にはいないはずの「外来種」のウシガエルやアメリカザリガニも見られるようになりました。特にアメリカザリガニの繁殖力はすさまじく、ザリガニの捕食により次第に他の生き物が減少するようになりました。

アカメヤナギ、ハンノキ等もともと足立で見られた植物が生育している公園内

ー 外来種にはなにか対策をおこなっているのですか?

伊藤さん:はい、来園者が参加するザリガニの駆除活動「ザリガニ釣り」を開園4年後の2009年から開始しました。これは、ザリガニを捕まえる道具を来園者に貸し出し、捕獲したザリガニを清流館に持ってきてもらうというものです。初めて参加する人には、アメリカザリガニの外来種としての側面を知ってもらうクイズを行うなど、自然解説プログラムの一つとして実施しています。
最近では、アメリカザリガニの捕獲数が大きく減少したことで、ヤゴやスジエビの数が増加し効果が表れています。

最近ではアメリカザリガニの生息数が減り、腕が良くないと釣れなくなりました

子どもたちが自ら体験して学ぶ

伊藤さん:「ザリガニ釣り」は10年目を迎える2018年現在でも人気が高く、年間約4,000人が参加しています。生き物を捕まえ観察することは、自然を理解するうえで重要な体験であると私たちは考え、思い切って2016年7月からは公園での虫取り網、11月からはタモ網の使用を解禁しました。ただし、使うのは清流館で貸し出した虫かごと虫取り網または、バケツとタモ網のみです。

開始から1年間で約1,200人が参加した「虫とりアミを使った生き物とり」

獲った生き物は清流館へ持ってきて、自然解説員のアドバイスのもと名前を調べるなどの観察を行った後、獲った場所に返してもらいます。「これは何ていう名前?」と聞かれてもすぐには答えず、自ら図鑑等で名前を調べてもらうことによって、より深い理解と体験をしてもらえるよう心掛けています。

この日は捕まえてきたバッタの名前を調べました

自然と触れえる多様なプログラムを実施

ー そのような体験を通じて、自然や生き物に興味を持つ方も多そうですね。

伊藤さん:このほかにも公園では、それぞれの来園者の自然への関心度合いに対応できる多様なプログラムを提供しています(表1)。

中でも、自然への関心度の高い来園者向けに実施している「発展型プログラム」は人気が高く、事前の申し込み人数が定員(20〜50名)を超えるプログラムも多くあります。ボートに乗って池から公園内を観察する「うき島池ボートクルーズ」や、ハス田の管理の一環として実施する「泥んこハス掘り体験」等、来園者に楽しい体験と共に自然を知ってもらっています。これらの自然体験プログラムは、自然解説員全員(6名)でアイデアを出しながら、楽しいだけでなく公園のコンセプトにあった学びができ、参加者の心に残る内容にするよう心掛けています。

泥んこになる機会が減っているせいか「泥んこハス掘り体験」は人気プログラムの一つです

2016年度に実施した「身近な外来種を食べよう」では、この地域以外の場所からやって来た「外来種」のウシガエルやアメリカザリガニについて説明、観察した後に実際にそれらを調理して食べる体験をしてもらいました。

ー 都内の公園でそんな体験ができるとは驚きです。参加者の方の反響はいかがですか?

伊藤さん:単に説明を聞くだけでなく、観察し自分で調理し食べることによって強く印象に残り、自分たちにできる外来種対策はどんなことかを考える、きっかけやヒントとなりますね。実際に参加された方からは「初めて食べたザリガニ、カエルの骨の構造など知ることができ、楽しく勉強になりました」「貴重な体験ができました」等の意見を頂きました。

調理するウシガエル、アメリカザリガニは食品用に販売されているものを用います

生き物が定着する環境を目指して

ー 今後の抱負を教えてください。

伊藤さん:桑袋ビオトープ公園の基本概念は、生き物(植物も含む)を人為的に導入するのではなく、「以前その場所に存在していた環境を再現し、その場所に生息していた生き物を呼び戻し、それらが定着しやすいように環境の維持管理を行うこと」が原則です。このため、3年ほどまえから草刈の回数を変更することで植生の変化を促したり、一部の土を掘り返して植生をリセットしたりして、多様な環境を人為的に作り出す取り組みをしています。

草刈の頻度やタイミングを変えることによって、草丈が異なる様々な草地を作り出しています

その環境にあった生き物が定着し、豊かな生態系が維持されるには、長い時間と多大な努力が必要であるため、これらの管理作業の効果が見えてくるのはもう少し先になります。今後も多様な環境づくりの取り組みや自然解説プログラムの提供を元に、自然とふれあえる公園にすると共に、生き物を増やし、ビオトープの質を高め「ビオトープと言えば桑袋ビオトープ公園!」と言われるようにしたいと考えています。

運が良いと公園でカワセミに出会うことができます

記事提供:公園文化WEB(PARKFULパートナー)
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PARKFUL編集後記

自然や生き物というのは、モノのように「作って終わり」という訳にはいかないもの(本来はモノも作って終わりではいけませんが)。都会の中でこれだけの豊かな生態系を守りつつ、それでいて来園者にとっても魅力的な空間・体験でなければ公園としては意味がない。いつでも自然と触れ合えるこんな公園環境の裏には、それを維持してくれている方々がいることに感謝したいですね。

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