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【渋谷区】リニューアルは完成ではない、一緒に遊んで育てる公園。誰でも参加できる遊び場「恵比寿南一公園」

渋谷区 2026.05.01

恵比寿駅から徒歩10分、恵比寿ガーデンプレイスから線路を挟んで向かい側にある恵比寿南一公園が今回の舞台です。

この公園内には、「えびすどろんこ山プレーパーク」があり、一歩足を踏み入れると他の公園とは違うということがわかります。ブランコや滑り台などの遊具はなく、公園の真ん中に土が積み上がっており、小高い山になっています。

その土の山を裸足の子どもたちがどろんこになりながら走り回ったり、じょうろで水を流したりと思い思いに遊んでいます。都会のど真ん中にこんなにも自然な風景があるのかと驚きました。

プレーパーク(冒険遊び場)とは:子どもが自由に遊ぶ場所

そもそも「プレーパーク」とは、一般的な公園とは一線を画す場所です。都心の公園の多くは、安全管理のために多くの禁止事項に縛られがちですが、えびすどろんこ山プレーパークのモットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」こと。大人があらかじめ用意した遊び方をするのではなく、子どもたちが自ら遊びを発明し、挑戦し、時には失敗しながら学ぶことを大切にしています。

えびすどろんこ山プレーパークでも、土を触ったり、水を使ったり、走り回ったりと、子どもたちの好奇心を最大限に引き出す環境を維持しています。今回のリニューアルも、そうした自由な遊びをさらに豊かにするために計画されました。

リニューアルポイント:暑さと日陰の課題

自由な遊び場であるこの公園が直面していた大きな課題、それが猛暑による利用制限でした。昨今の異常気象に加え、老朽化した樹木の伐採などにより日陰が極端に少なく、夏場には暑さがピークとなる時間帯の一時休園や開園自粛を余儀なくされるほど、利用者にとって過酷な環境が続いていました。

この状況を打開すべく、運営を担う一般社団法人渋谷の遊び場を考える会、公園所有者の渋谷区、管理者のサッポロ不動産開発の三者が協働。「遊びを通して子育ち、樹育て、森の入口プロジェクト」を策定し、2025年10月に、公益財団法人都市緑化機構が主催する「第36回緑の環境プラン大賞」国土交通大臣賞を受賞しました。


具体的な整備内容:2つのキーポイント

1. 「ドングリの森」が作る未来の木陰

このプロジェクトでは、数十年後を見据えた植栽が行われました。

  • 植栽を担当したのは、恵比寿で造園業を営む株式会社トシ・ランドスケープの中村さん。中村さん自身、35年前はここが地元でよく遊んでいた場所だったそうです。そんなゆかりのある地で、数十年後を見据え、クヌギ、コナラ、トウカエデ、ムクロジの4種を植樹。これらは夏に豊かな葉を茂らせて天然の日陰を作るだけでなく、秋には子どもたちが大好きなドングリや実をつけ、遊びの素材そのものになります。



  • また、地面には踏圧に強いノシバを採用。子どもたちが裸足で駆け回り、踏み固められても力強く育つ、プレーパークに最適な品種です。

2. 建築の知恵を活かした「多角形のデッキ」と「庇(ひさし)」

全体の設計・監理を担当されたのは、有限会社ティー・プロダクツ建築設計事務所の谷口さん。機能面と体験が融合し、自然環境と共生する独創的な構造のデッキと庇が作られました。

  • 3方向に梁を渡し、木材を段々に積み上げた多角形状の庇は、特に午後の厳しい西日を効果的に遮り、涼しい日かげを生み出すよう設計されています。


  • 公園の中心に設置したベンチは、単なるベンチではなく、今回植樹した木の根っこを守る役割を果たしています。地域の方が腰掛けてランチを食べたり、高さの違うデッキが組み合わさることで、子たちがアスレチックのように遊べる場にもなっていました。
    このデッキですが、予算の都合もあり、耐候性のあるデッキ材の調達を優先して、組み立てはこちらのプレーリーダーが行ったという話しを聞いて、大変驚きました。

住民と子どもたちが主役となった整備プロセス

今回のリニューアルでは、工事期間中もプレーパークとしての運営を継続し、子どもたちも整備に携わったようです。通常は危険として遠ざけられる工事現場を、体験や遊びの場に変えることもプレーパークらしいなと感じました。

  • 庇の基礎掘削で出た残土を、どろんこ山に戻す作業では、子どもたちが自発的に土を網でふるい、石のガラを取り除く作業を手伝いました。
  • 庇の保護塗料は、近隣住民や子どもの保護者も参加。雪が降る中での作業もあったようで、これもまた良い経験になったのではないでしょうか。

「でき上がった公園で遊んでいる子よりも、作っている最中の現場で活動している子のほうが、ずっと活き活きした顔をしている」

渋谷の遊びを考える会の入江さんのこの言葉が、プレーパークの存在意義そのものだなと感じました。

多様な関係者が集結したリニューアルセレモニー

2026年4月11日に行われたセレモニーには、この公園を支える多様なステークホルダーが集まり、それぞれの立場からこの場所の価値を語りました。



  • 長谷部渋谷区長:
    「行政の発注ではできない、温かみのある公園になった。禁止事項が多い都心の公園において、子どもたちが自分たちの責任で遊びをクリエイトできる場所として、街の力が集まったことを非常に心強く思う」と、市民主導による整備の意義を強調されました。


  • サッポロ不動産開発 富岡社長:
    「ひらめきが生まれる街を作ろうというスローガンのもと、緑あふれるオアシスの整備を重要アクションに位置づけている。この場所が、子どもから大人まで新しいひらめきや活力を生む拠点になることを期待している」と、地域への想いを表明されました。

公園づくりの一部を体験「クローバーの種まき」

セレモニーの締めくくりには、地域の皆様や公園に来ていた子どもたちと共に、クローバーの種まきが行われました。

リニューアルで完成ではなく、ここからみんなで共に育てていくという想いが感じられました。

恵比寿の森の入り口として

恵比寿南一公園は、今回のリニューアルで完成ではなく、地域の人々と子どもたちの手によって育てられていきます。この場で遊んだり、体験したりしながら成長していく子どもたちと共に、この恵比寿の中の森の入り口が大きく育っていくことを願うセレモニーとなりました。
この公園自体はもちろん、プレーパークも誰でも参加することができるので、ぜひ実際に足を運んだりして、公園の成長をみなさんの目で見守ってください。

参考:サッポロ不動産開発株式会社 プレスリリース
恵比寿南一公園、緑化整備によりリニューアル
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