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ソーシャルイノベーションフォーラム2017 分科会「ひらく公園」

レポート 2017.11.25

2017年11月18日(土)東京国際フォーラムで開催された「ソーシャルイノベーションフォーラム2017」にて、公園をテーマとした分科会が開催されました。題して「ひらく公園」。モデレーターであるTOKYObeta代表 江口さんの「これまでの公園の概念を覆すような、これからの公園のあり方を考える機会としたい」との言葉でスタートしました。

公園がテーマということで、会場にはベンチや遊具(提供:コトブキ)が設置されました。登壇者のみなさんもリラックスした様子で、公園らしいオープンな雰囲気のセッションとなりました。また分科会の全ての内容は、東海大学 富田研究室の協力によるビジュアルレコーディングで可視化されていますので、ぜひあわせて御覧ください。
ひらく公園ビジュアルレコード:http://tomita.me/park/

エリアマネジメントにおける公園の可能性

まず、法政大学現代福祉学部教授の保井美樹さんからは、エリアマネジメントの視点から公園の可能性や公園への関わり方についてのお話。公園をつくる時代から、ストックを活用する時代に移り変わってきている現代。各地では少しずつ「公園レボリューション」が生まれてきていると言いますが、そうした新しい公園の取り組みを考える時に重要な3つの視点を提示してくださいました。

法政大学現代福祉学部教授 保井美樹氏

  • 公園だけを考えるのではない
    公園と周辺施設とが一緒になって価値を高めることで、公園はエリアブランディングの核となる。
  • 公園が自立運営するしくみづくり
    予算を消化していくだけの公園ではなく、公園の中で価値を膨らませるような仕組みにが必要。
  • まちづくりは人材育成
    身近な場所だからこそ、公園は地域への参加のきっかけになる可能性を秘めている。

たとえば南池袋公園で開催するマルシェは、地域事業者に参加してもらうことで公園が地域と人をつなぐ場となり、「街のファン」を増やすような取り組みにしているとのこと。

このように、エリアマネジメントでは、管理者と使い手が一体となって取り組むことが大切。そのためには、市民もただ受け身でいるのではなく、自ら楽しいことを企画したりそれを支える人を増やしていくことが必要で、そうした「市民を育てる場」としての役割も公園にはあるというお話でした。

ポートランドに根付くボトムアップの公園づくり

続いて、ポートランドを拠点に活動するZIBA Design Inc.の山崎満広さん。いまや全米一住みたい街と言われるポートランドは、街のマスタープランを公園の専門家が作ったという歴史があるそう。街の面積の12.6%が公園で、予算や公園に関わる職員、そしてボランティアの数などどれを見ても、ポートランドにとって公園がどれだけ重要な存在かが分かります。

ZIBA Design Inc. 山崎満広 氏

たとえばパイオニアコートハウススクエアは、大型の駐車場になるのを市民が反対して公園化した場所。市の予算が無かったため、1口15ドルで募金をあつめて公園を作ったそうで、募金者の名前がレンガに刻まれて公園内に残されています。現在では年300以上のイベントが開催される集客力のある公園になっていて、そのマネジメントを民間企業が受託し、市には公園の使用料が入る仕組みなのだそうです。
また、ディレクターパークでは、公園脇のフェスティバルストリートと呼ばれる通りを、イベント時には封鎖できる仕組みになっており、運用の面でも使い勝手が考慮されています。

パイオニアコートハウススクエアのレンガ

イベント運用を考慮したディレクターパーク

ポートランドでは、公園に限らず都市計画を行うときにまず利用者像を想定し、実際にそういう人たちを呼んでデザインワークショップを行ったうえで、計画に落とし込むのだそうです。利用者の声から公園づくり・街づくりが始まっているからこそ、日常的に公園に関わるボランティアの人数の多さなど、公園に関わることが当たり前の文化になっているのだと感じました。

共創によるこれからの公園づくり

最後は弊社コトブキグループの代表、深澤からのプレゼンテーションです。創業100年を超えるコトブキは、まさに日本の公園の歴史とともに歩んできた企業。その中で公園づくりのあり方の変遷を「公園づくり1.0→3.0」と題して、コーヒー業界の3つの波になぞらえて解釈しました。ファーストウェーブ=大量生産・大量消費の時代、セカンドウェーブ=質と多様性の時代、そして今迎えている公園3.0とは?

株式会社コトブキ代表 深澤幸郎氏

国や自治体が主導してきたこれまでの公園づくりに加え、これからは市民や民間企業などさまざまな人が主体性をもって公園づくりに関わっていく時代になる。つまり公園を「共創」することが次世代の公園づくり3.0ではないかという提起です。

コトブキグループとしても、メーカーの枠を超えて公園3.0に向けて取り組みはじめています。たとえば、公園に特化してさまざまな情報を集約・発信するためのプラットフォームとして取り組んでいるのが、アプリ「PARKFUL」。また、地域に密接な「街区公園」を住民とともに考えるプロジェクトとして、世田谷区松陰神社前で公園ワークショップに取り組んでいます。
これまでの公園づくり1.0、2.0を土台として、3.0では公園を社会問題解決のための場として捉えていくことが必要。そのためには「共創」が鍵になっていくのではないかというお話でした。

「あなたができる公園化」とは?

ここからは参加者を交えて、公園への関わり方について考える時間。2つの問いについて、参加者のみなさん同士でアイデアを交換しました。

Q1:自分の住んでいる場所や、所属先のスペースをどのように公園化できますか?

陸前高田市役所にお勤めの大林さんは、市役所の中のスペースに注目。「市役所の雰囲気が暗いので、クリエイティブな作業をしたり、外から人を招いて前向きな会議をするのに、公園のような明るい空間があるといいと思った」とのことで、ポートランドに対抗して市庁舎内に世界一小さな公園を作るとうアイデアを提案してくださいました。

また商店街に注目したのはgreenbird赤羽リーダーのぱぁこさん。「商店街の特徴といえば、まっすぐ!であること。ならば100m走とか、商店街の店舗を巻き込んだ借り物競走とかできるといい。大人も子どもも楽しめる空間で、賑わいづくりにつなげたい。」とのアイデアでした。

Q2:あなたやあなたの所属している組織が、いまある公園にできることはどんなことですか?

防災は公園の大事な機能のひとつ。フカノさんの「災害は突然やってくるもの。なので、防災訓練も夜中などに突然行う!」というアイデアには、会場のみなさんも納得。また、公園で地域の集合写真を撮ってみるというアイデアも。地域の人が年に一回集合する場を公園につくる工夫、面白いアイデアです。

スポーツ施設コンサルタントの上林さんからは「スポーツ施設はスポーツに使いすぎている!」という当事者だからこそのご意見。スタンドで大学の講義をやってみたりしてもいいのではないかとのアイデアには、登壇者の山崎さんからも「もっとテンポラリーな使い方ができるようになると、そこから規格外のアイデアも生まれそう」とのご意見がありました。

さまざまな視点で公園のあり方に切り込んだ前半のプレゼンテーション、そしてまさに「共創」の時間となった後半のセッション。登壇者、参加者の枠を超えて、これからの公園のことを考えることができた2時間となりました。これで終わりではなく、これからも継続して議論したり、実際のアクションへつながっていくことを期待したいと思います。

登壇者と学生スタッフで集合写真!

Written by 梅村夏子(PARKFUL編集部)
好きな公園:木場公園、清澄庭園
ふらりと行った公園で生まれる偶然の出来事や出会いを楽しむのが好きです。

紅葉の美しい公園:須磨離宮公園(兵庫県神戸市)

紅葉の美しい公園:奈良公園(奈良県奈良市)