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KIITO公園ゼミ「公園と地域をつなぐ仕組みを考える。」(2)

レポート 2017.04.28

KIITO公園ゼミ

2017年3月23日〜25日、神戸市のKIITO(デザインクリエイティブセンター神戸)で開催された「+クリエイティブゼミ vol.23 まちづくり編 公園と地域をつなぐ仕組みを考える。」(以下、公園ゼミ)のレポート第2回。今回は、実際のワークショップの様子とその成果をご紹介します。
レポート(1)はこちら>

公園について考える4つのアプローチ

まず、自己紹介の中でゼミ生の関心事としてあがったさまざまなキーワードを、4つにグルーピング。この中から各自の興味のあるグループに参加し、それぞれのアプローチで「公園と地域をつなぐ仕組み」についてアイデアをまとめていきます。

A:「公園のあり方」から考える
B:「公園に限らずパブリックな場所や遊び場」について考える
C:「公園の利用方法やルール」について考える
D:「公園の続け方」について考える

KIITO公園ゼミ

迷いながらもうまく4グループに分かれました

グループワークでシナジーを生み出す!

講師の永田さんから、グループワークにおける”シナジー”の重要性についてレクチャーがありました。スティーブン・R・コヴィー博士の著書「7つの習慣」を引用し、グループワークの効果を最大化させるためには、お互いの違いを認め弱みを強みで補いながら相乗効果を生むことが大切だ、というアドバイスです。
さらにKIITOスタッフの加藤さんからは、「How Might We」という問題定義のコツについて解説がありました。「我々はどうすれば◯◯できるか」という問いを始めにしっかり立てることが、解決の方向性をぶらさずにチームで議論を深めることにつながると言います。

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解決すべき問題をHMWで定義しよう

グループワーク自体は基本的に自由。3日間にわたり各グループとも活発なディスカッションが行われていました。実際に近くの公園に出かけていったグループもあったようです。

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白熱したグループワークの様子

ワークショップの成果発表!

会場には神戸市公園部計画課の大西さん、デザイン都市推進担当の尾﨑さんらも駆けつけ、各グループのアイデアにコメントをいただいたり、時にはゼミ生からの質問に答えてくださいました。

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神戸市役所の大西さん、各発表にコメントをいただきました

グループA「PARK DAY 〜公園の日〜」

「公園のあり方」について考えるグループがまず感じた課題は、現状の公園は明確な目的のある人しか来ないということ。そこで「目的がない人にも公園に来てもらうためにはどうしたらよいか?」という問いを立てました。そこで辿りついた仕組みが「PARK DAY(公園の日)」を作り、公園を拠点に地域を楽しむイベント化しようというもの。ひとつひとつの公園を単体で楽しむのではなく、エリアを楽しむ”基地”として公園を位置づけ、複数の公園をめぐりながら楽しむことで地域全体の活性化にもつなげようというアイデアです。

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疑似体験してもらいたい、と三宮駅界隈を例にシミュレーションを示してくれました。スタンプラリー形式なっていてタンデム自転車で公園を巡れること、地場の食材を提供する屋台があったりファッションの街神戸を生かした企画を盛り込むことなど、あまりに具体的な説明にすでにそんなイベントが存在するのではないかと思うほど! 他のゼミ生も想像を膨らませながら聞き入っていました。

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複数の公園をつなげて考えるというのは、やっていきたいと考えているところです。イベントで地場のものを提供するというのもとても大事。また、公園とファッション・農業など別のジャンルとコラボ出来ないかということも考えていたので、具体的なアイデアが出てとても興味深いです。(神戸市 大西さん)

グループB「若い人たちが集まりたくなるような空間とは?」

「パブリックスペース」という切り口で取り組んだこのグループ。偶然にも集まったメンバーがとても若い! 議論する中で、彼ら自身が地域のつながりを生み出すには若者の力が必要だと感じたことから、若い人たちが魅力を感じて集まりたくなるような空間とはどんな場所か? 当事者の視点で提案をしてくれました。ポイントは「家では出来ない非日常的なこと」「SNSで反応をもらえるような話題性」「ザワザワしてる居心地良さ」

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具体的なアイデアが下記の4つ。

  • タダの椅子:カフェに入るようなお金がなくて座る場所がない若者たちのための、タダ(無料)のタダ(只)の椅子
  • 黒ひげベンチ:何人か揃った時に初めてなにか起こるようなベンチ。たとえば3人座ると光るベンチ、など
  • 夢を語る掲示板:夢を書いたら、だれかが反応してまた書き込んでくれる掲示板
  • 光を灯す仕組み:落ちている空き缶をゴミ箱に入れて、◯kg溜まったらひとつ電灯を灯すことができる、という街全体を巻き込むようなしかけ

黒ひげベンチのアイデアには、ゼミ生から「面白い!座ってみたい!」の声が続々。若いメンバーらしい新感覚の提案に会場も大いに盛り上がりました。

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高級感のある椅子を置いてみたらどうか、ベンチではなく段差にしてどこに座ってもいいような場所にするなど、いろんな人が集まりやすい空間づくりについてはいろいろ考えています。掲示板の話もありましたが、落書きができる壁を作ろうかという声があったりもします。こういうアイデアはとても参考になるので、是非どんどんあげて欲しいです。(神戸市 大西さん)

こういうのはアイデアで終わらせるのではなく、一度やってみると良いですね!(永田さん)

グループC「自治会のスキルアップ」

「公園の使い方・ルール」から取り組んだこのグループ。議論であがった課題は「公園の使い方やそこに潜む危険を知ってるようで知らない」ということ。特に子どもたちが自ら遊具の危険性を察知したり判断するのは難しいよねという話から、子供から自治会、地域の人まで、公園について学ぶ場が必要ではないか?という問題提起がありました。

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とくに注目したのが自治会の存在。地域運営に密接に関わる自治会のスキルアップ・意識改革によって地域の公園の活用度合いが変わるのではないか、という提案でした。具体的なアイデアとしては「公園ドクター」を育成して、その人たちが地域の公園のリサーチをして教えてくれる人、地域の人や子どもを持つ親御さんに遊ばせ方や注意方法を指導するという制度が提案されました。

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ゼミ生からは自治会と行政の関係について質問がありました。

自治会が担っていることは多いです。もし自分の地域で自治会の働きが弱いと感じることがあれば、それは自治会長さんをフォローする周りの人が少ないからかもしれません。自治会長1人ではなく組織で動ける自治会は、できることも多いんです。(神戸市 大西さん)

公園くらいは自治会に任せるのではなく、地域の公園まるっと担ってくれる別の民間組織があってもいいのかもしれないですね。(永田さん)

グループD「公園をとりもどせ!」

「公園の続け方」について考えたこのグループでは、”続ける”というキーワードをさらに掘り下げ、「維持・管理し続ける」「使い続ける」2つの切り口でアイデアを深めました。地域の人が公園を自らの力で続けていく、つまり地域のものとして取り戻すことがコンセプトです。

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アイデア(1)おじさん2.0
公園に今あるものを活かせないか…と考えたとき、注目したのが「掃除のおじさん」。公園を掃除するにとどまらない活躍の可能性があるのではないかと考えました。おじさんをステキにする、おじさんの役割を広げる、おじさんがやっていることを伝える等を通じて、地域の人にとってより身近な存在となることで、公園を維持・管理に関わる人も増えるのではないかという提案です。

アイデア(2)Park meets ◯◯
これは、公園でなにかをやりたい人と、そのための道具やスキルを提供できる人をマッチングするサービス。公園を活用したいけど自力でできることは限られる、そんな人たちがもっと公園を使えるようにするための仕組みです。公園に新しいアクティビティを持ち込むきっかけにもなり、また住民の「やりたい!」という声が公園活用に反映される仕組みにもなるという提案です。

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さらにフューチャーアクションとして、近隣公園を中心とした小学校区くらいの単位で、地域の街区公園のクオリティコントロールや備品の管理・貸出などをするネットワークを作ると、こうした仕組みがより運用しやすいのではという提案までありました。

皆さんが公園で見かけるおじさん(おばさんもいると思いますが)には、自治体の職員、清掃したり壊れた施設を修繕したりする業者さん、主に清掃や除草などの作業をしていただいている地域の公式ボランティア、非公式ボランティアの4種類の方々がいます。その中で一番公園がきれいなのは地域のボランティアさんがやっているところ。自分たちのために気持ちを込めて掃除をするので、市が限られた回数でやるよりも全然きれいなんです。
また、神戸市では小学校区ごとに「ふれあいのまちづくり協議会」という組織があり、お年寄りの給食会や健康講座など地域交流の場を設けています。公園もそうした活動の場になればよいと思います。(神戸市 大西さん)

アクションにつなげる

どのグループも、公園にとどまらず「地域」という広い視野で捉えたアイデアとなりました。地域には自治会・小学校区などさまざまな組織や単位がありますが、いずれにしても大切なのは「公園」ではなく「公園も含めた地域コミュニティ」なのだということをあらためて感じました。

公園ゼミはあくまでアクションにつなげることが目的。今回のアイデアも永田さんやKIITOのメンバーが、神戸市と場を設けてアクションの可能性を検討していくそうです。そして今回のテーマである「仕組み化」をするには、もっと練り込むことが必要。次回はこれらのアイデアをさらに深めていくようなワークショップが開催できればとのことで、今からとても楽しみです。
また参加したメンバーもワークショップを通じてさまざまな気づきや学びを得たようです。それぞれが「風の人」として地域の公園と向き合っていくことを、期待せずにはいられません。

PARKFULでも引き続き注目していきたいと思います!

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パークの「P」で集合写真!

Written by 梅村夏子(PARKFUL編集部)
好きな公園:木場公園、清澄庭園
ふらりと行った公園で生まれる偶然の出来事や出会いを楽しむのが好きです。

豊平公園(北海道札幌市)

蘭丸ふる里の森(岐阜県可児市)