PARKFUL

日本全国の公園の魅力を発信するWEBメディア

×
> 公園を考える > これからの公園 > 苦情や要望は出会いの場:公園における市民協働の実践 #01

苦情や要望は出会いの場:公園における市民協働の実践 #01

インタビュー 2018.03.29

まちづくりにおいて「市民協働」は欠かすことのできないテーマです。それは公園にも言えることで、先日行った公園行政アンケートでも市民協働は関心事項の上位にあがりました。そんな公園における市民協働のさまざまな実績から、視察や講演などの要望が集まっているのが、西東京市 みどり公園課の職員、高井譲さん。市民協働自体はすでに多くの自治体で取り組まれていますが、なぜこの西東京市の取り組みに注目が集まっているのか、その秘密を探るため高井さんにお話を伺いました。

西東京市みどり公園課 高井譲さん

じつは高井さん、この2018年3月末をもって公務員を卒業されます。しかし公園における市民協働への想いは冷めるどころか強まる一方で、退職後も日本全国の自治体に市民協働の取り組みを広めていきたいと言うのです。高井さんご自身が苦労をされてきたように、全国には市民協働に取り組みたくても、やりかたが分からずに困っている人がいるはずだと。
そこでPARKFULでは、高井さんから伺った市民協働のさまざまな実績とノウハウを、記事にしてご紹介することにしました。本日から全5回にわたり連載でお伝えしてまいります。

実践01:住民との相互理解を深める「市民懇談会」

30年にわたり、自治体職員として住民の方と接してこられた高井さん。その中にはやはり苦情という形で寄せられる声も多く、対応には苦慮していたそうです。

高井さん寄せられた苦情を集計してみると、平成27年度にみどり公園課に寄せられた苦情だけで約500件にも上ることが分かりました。そこで苦情を寄せてきた住民の方に、こうお願いしたのです。「近所の方やお友達など同じようなことを感じている住民の方がいたら、その方々のお話も聞かせていただけませんか?」と。すると、全てというわけではありませんが、中には同じ悩みを抱える方々を集めてくれる方がいました。

平成27年度 みどり公園課に寄せられた苦情の内訳

高井さんこのようにして始まったのが「青空こんだん会」です。ただ一方的に受け付けるだけだと、声を上げる人・声の大きな人の意見だけが届く形になってしまいますが、市民懇談会として実際に顔を合わせ、輪を持つことで、市民ひとりひとりの話を聞くことを大切にしています。

青空こんだん会に集まる市民のみなさん

実践02:市民は問題解決のパートナー

わざわざ住民を集めると言うと、問題を大きくしているかのようにも思えます。しかし、市民の方々の中に飛び込んでいくことで、苦情の背景にある問題を根治することにつながるといいます。そうして解決したひとつの例が、ペットのマナー問題だったそうです。

高井さん市民懇談会で集まっていただいた時に、一人ひとりから話をよく聞いたうえで、私から「なにか自分たちでもできることはないでしょうか?」と問いかけました。市民のみなさんにも一緒に考えていただきたかったのです。その結果、チラシを配ってみようという話に発展し、実際に市民の方々が公園でマナーアップのためのチラシを配布したんです。すると、あっという間に解決しました。これは、苦情の原因が解決したことももちろん大事なのですが、市民の皆さんが自分たちの手で解決したことによって、達成感を感じていただけたという点がとても大きかったと思います。

公園のマナーアップワークショップの様子

高井さんこういう時に地域の人を集めることができる住民の方というのは、すでに地域の中で積極的に活動をしている地域のリーダーであることが多いんです。そういう方を介して地域の方々との距離を縮めることができると、より相互の理解を深めることにつながっていくと思います。

高井さんによれば、市民の方々の声を聞いたり協力を求めたりする際、自治会の役員さんなどだけでなく、地域でさまざまなサークル活動や市民活動行っているリーダーなどを通じて、多様な市民との出会いを持つことが大きな力につながるとのことです。

実践03:情報公開が、合意形成につながる

行政の行動が、住民の方々の反発を招く事例も少なくありません。そういう事例も、住民のみなさんとの対話のプロセスを踏むことでまったく変わるといいます。西東京市で実際にあった例が、公園内の桜の老木を伐採するという話。

高井さん年を取って安全性が心配されていた桜の木があったのですが、西東京市では伐採を進める前に、公開で樹木診断をすることにしました。一般公募で集まっていただいた市民の方に樹木診断を見ていただき、さらに樹木医の方に座学もしていただきました。その上でこの桜の木をどうするべきか、市民のみなさんと話し合うワークショップを行ったんです。その結果「伐採はやむを得ない」という結論になりました。そして反対も苦情もなく伐採は行われました。
このとき、保育園の方にも声をかけて来ていただきました。子どもたちの安全を第一に考えている方々ですね。合意形成をする際には、いろんな立場の人の声が交わるようにすることも大切だと考えています。

樹木医の解説付き樹木診断

座学で老木の状態を学ぶ

合意をもって伐採が完了した桜

とても合理的のように思えますが、実際にはこのように事前に情報公開が行われ、順当に合意形成が行われるケースは少ないように感じられます。

高井さん行政側は、ときにはノープランでやってしまう場合があります。世の中は情報公開が進んでいて、SNSなどを活用して情報共有も積極的に行ってます。市民のみなさんにとってはそれが当たり前になっています。しかし、残念にも行政側は考え方が少し古く、結論だけを提示してしまうときがあり、そこで反発や反対が起こってしまう場合があります。

#01まとめ

高井さんが繰り返し仰っていたのは「住民を理解する」ということ。上から目線で言うのではありません。同じ目線に立ち、同じ情報を共有し、住民と行政とが二人三脚で取り組める関係を作っていこうということです。そしてそのために、より多くの住民の方々と出会う場を持たれていることがわかります。高井さんは、苦情や要望も出会いのきっかけを作ってくれるものだと捉え、そこから対話を始めていったのです。

Written by 梅村夏子(PARKFUL編集部)
好きな公園:木場公園、清澄庭園
ふらりと行った公園で生まれる偶然の出来事や出会いを楽しむのが好きです。

三橋総合公園(埼玉県さいたま市)

PARKFULアプリ共創レポート:2018年3月