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全国初の公園内保育園「にじの森保育園」の一年から見えてきたこととは

レポート 2018.04.16

都市部を中心に課題となっている、待機児童問題。その対策の一つとして、都市公園の中に保育園などの一部福祉施設を設置することが、都市公園法の改正によって認められました。
法改正に先立ち、2017年4月には国家戦略特区制度を利用した全国で初めての公園内保育園が誕生しました。そのひとつが、荒川区にある都立汐入公園内にできた「にじの森保育園」。公園内保育園としてこの1年間どのように運営されてきたのか、取材へ伺ってきました。

開放的な立地環境が強み

園舎の周りには、日差しを遮る建物がなく日当たりは抜群。南向きの窓は天井まで続き、暖かい光が差し込んでいました。この日当たりの良さは公園内保育園の魅力のひとつと言えそうです。天井が高めに設計されていて、とても開放的です。
園舎に入ってすぐ目に飛び込んできたのは ”こどもライブラリー”。絵本の街である荒川区、ここにもたくさんの絵本が置かれています。緑や木々で彩られた空間は、まるで自然あふれる公園のようでした。お迎えの時間にはここでしばらく過ごしていく親子も多いそうです。

オープンスペースとなっている子どもライブラリー

あかるく開放的な保育室

保育園を建てるにあたり、様々な地域で課題になっている騒音問題。ここ汐入公園は約13haもの広さがあり、周囲の住宅と距離があるためこれまで騒音トラブルになったことは一度もないそうです。

目の前には芝生が広がっていて、住宅からも離れている

公園と保育園の関わり方

保育園のすぐ裏には、汐入公園サービスセンターがあり公園スタッフの方が常駐しています。公園でイベントが行われる際の注意情報や、公園で遊んでいる時に気づいたことなどの情報を共有し合い、保育園と公園が連携しながらお互いの安全が守られているそうです。
また、公園と保育園との共生・調和を図るため、一部をのぞいて塀やフェンスを設けず平屋建てで設計されています。

今回お話を伺った、社会福祉法人三樹会 にじの森保育園 渡邉真弓園長

渡邉園長:すぐ目の前が公園というのは、園庭代わりとして利用できるのはもちろん、お迎えに来たあとそのまま公園で遊んでいくこともできたりと、とてもいい環境だと思います。一方で、安全やセキュリティ面では不安材料もあります。防犯対策はしていますが、一部塀が低い箇所にゴミを投げ入れられていたこともあります。公園サービスセンターの方が一日に何度も見回りをしてくださっているので、とても助かっています。また通園の時間帯には区のほうからシルバー人材センターの方を派遣していただき、見守り役をしていただいたいたりしています。

公園の中を通ってお散歩から帰ってくる園児たち

汐入公園サービスセンター

公園の施設をどのように共有して行くかというのもポイントの一つ。保護者の方が送迎時に使う駐輪場は、汐入公園のものを使わせてもらっているそうです。保護者からはもっと園舎の近くに停めたいという要望もあったそうですが、園舎の外はすぐ公園の敷地。そこは公園のルールに従い、指定の駐輪場に停めていただいているそうです。

保育園の方々が利用する駐輪スペース

地域と交流する保育園

保育園を作るにあたって、東京都や荒川区、地域の方などを交えた話し合いが何度も行われたそうです。その中で決められた約束事が2つ。

まず一つ目は、園舎屋上の一般開放です。もともとグラウンドがあった場所を保育園の整備場所としたため、今までグラウンドを使っていた方々が今後も同じように利用できるよう、週に3回ほど屋上を開放しているそうです。セキュリティのため、公園側から直接上がれるよう外階段が設けられていました。普段は保育園の園庭としても利用されていて、取材の日は子どもたちが元気に走り回って遊んでいました。

人工芝が敷かれた屋上には、グラウンドゴルフなどで使うラインが引かれている

もう一つは、保育園に通われていない親子も自由に立ち寄れる子育て交流サロンの設置です。オムツ替えなどでも気軽に立ち寄って欲しいと、渡邊園長は仰っていました。定期的に開催される身体測定やベビーマッサージなどのイベントは大人気で、たくさんの親子が利用に訪れるそうです。

親子で賑わう子育て交流サロン。イベント時には60組ほど集まることも

公園への保育園設置によって、待機児童問題の解消や公園の活性化が期待されています。その反面で、公園内保育園の実現には、防犯面や公園利用者との関係など、配慮するべきポイントも多いことが分かりました。今回取材させていただいた「にじの森保育園」では、公園と連携したり、地域住民との交流を盛んに行ったりと、地域の方々との共生をしっかり行っていたことが印象的でした。今後も増えることが予想される公園内保育園、それぞれの地域や公園の特性によって柔軟な設計や運営が求められそうです。

Written by Chizuru(PARKFUL編集部)
好きな公園:六義園、国営昭和記念公園、日比谷公園、華蔵寺公園(群馬)
天気のいい日には、公園でピクニックを楽しんでいます。最近はカメラを勉強中。

三重県民の森(三重県三重郡菰野町)

連載:ポートランドの公園に行こう #05 タナー・スプリングス・パーク