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「もっとやれる!日本の公園 〜日本とニューヨークの視点でこれからの公園を語る〜」開催レポート(2)

レポート 2018.06.11
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5月17日(木)、PARKFUL主催として初のトークイベント「もっとやれる!日本の公園〜日本とニューヨークの視点でこれからの公園を語る〜」を開催しました。

イベントレポート第2回では、プログラム前半の登壇者プレゼンテーションの内容をお伝えします。女性やニューヨークという共通のキーワードはありながらも、それぞれ異なる立場から公園に関わっていらっしゃるゲスト3名に、それぞれの経歴から現在取り組んでいるお仕事、活動についてお話いただきました。三者三様、刺激あり、共感ありのプレゼンテーションを、ダイジェストでお伝えしていきます。

ニューヨークの個性豊かな公園たち

ゲストプレゼンテーションの前に、コトラボの海外視察担当である井上より2015年のニューヨーク視察で実際に見てきた印象的な公園を、写真を中心にご紹介させていただきました。今回ご紹介したのは以下の6公園。公園ごとに非常に個性豊かで、そして多様な過ごし方があることが、写真からも伝わるかと思います。

Central Park/セントラルパーク

Brooklyn Bridge Park/ブルックリンブリッジパーク

The High Line/ハイライン

Bryand Park/ブライアントパーク

Imagination Playground/イマジネーションプレイグラウンド

Pocket Park/ポケットパーク

これ以外にも、視察では100を超える公園・広場を見て回りました。その内容をまとめたのが、参加者の皆様にもお配りした冊子「PARKFUL in New York」です。イベントには参加できなかったけど興味があるという方は、ぜひオンラインショップでお求めください。(ポートランドやコペンハーゲンの視察レポート冊子も販売中です)

歩いて10分で公園の街

最初のゲストプレゼンターは、ニューヨーク市公園局の島田さん。参加者の皆さんの関心も高かった、ニューヨーク市の公園政策に関するお話から始まりました。

島田さん:ニューヨーク市公園局で働く人は約4,500人、とても規模が大きい組織です。そして公園数は現在4,238箇所ですが、今も新しい公園の整備を進めていて、どんどん増えています。

ニューヨーク市公園局 都市計画、GISスペシャリスト 島田智里さん

前市長であるブルームバーグさんが、持続可能な街づくりのための「PlaNYC」という計画を策定しました。そこで掲げられている10項目のひとつが「公園・オープンスペース」。2014年に市長が変わってからも、この政策を更に強化し「OneNYC」として取り組みを進めています。

今、公園局が特に力を入れている取り組みのひとつが「Community Parks Initiatives」です。
ニューヨーク市では、だれもが徒歩10分で公園にたどり着けることを目標に掲げていて、特にかつて治安が悪かったり移民が多い地域などの、公園が少ないエリアで重点的に公園を作っています。

公園局が注力するCommnity Parks Initiatives

GISで緑の価値を可視化する

続いて、島田さんご自身のお仕事について。

島田さん:私が取り組んでいるGISは、データをマップ上に可視化し、関係性を把握するための道具です。さまざまな情報を重ね合わせることで、単体の情報ではわからなかったことが見えてきます。
たとえば私が実際に作ったものでは、現在の緑化の情報、不動産価値、人口の増え方などを重ね合わせて、色の濃さで緑化活動の優先エリアを可視化したマップがあります。それを元に、さまざまな緑化のプロジェクトを進めています。

可視化された情報をプロジェクトの意思決定に活用

GISの具体例のひとつとに、市民参加による街路樹マップづくりがあります。
ニューヨーク市では、街路樹を10年ごとに調査しているのですが、2015年に行った最新の調査では紙で情報を集めることをやめ、Webアプリによって市民参加できる仕組みを作りました。その結果、2,241名の市民、60以上の企業団体が参加し、市全体で68万本の樹の調査をすることができました。

市民参加で集めた情報を可視化しオープンに

街路樹マップはWeb上で公開されているのですが、これはすごく面白いので、ぜひみなさんにも見ていただきたいです。木をクリックすると、樹の種類、名前、ID、ストリートビュー、どんなケアが行われてきたかの記録、さらには環境への貢献度まで表示されます。これらは日々更新されていて、実際の維持管理業務にも活用されています。

多様なパートナーシップスによる公園管理運営

島田さん:ニューヨーク市公園局はさまざまなパートナーシップスを組んで活動しています。たとえば「スチュワードシップ」は、市全体を対象にボランティアの斡旋、教育、アウトリーチ等をする団体です。行政の手が行き届かないソフトの面を担ってくれます。また「コンサーバンシー」は日本の指定管理に近いイメージですが、ある特定の公園を管理するための非営利団体です。セントラルパークのコンサーバンシーは、維持管理予算57億円のうち75%を自ら稼いできますし、一方では全員がボランティアだけのコンサーバンシーもあったりします。

公園に関わる多様なパートナーシップの形

一番のお気に入り Hunter’s Point South Park

最後に、ニューヨーク市民でもある島田さんのもっともお気に入りの公園をご紹介いただきました。

島田さん:ニューヨークに行かれたら、ぜひこの公園に行ってみてほしいです!すごくおすすめです。
ブライアントパークのように完全に商業化されているのではなく、大きな住宅公園なのですが、景色もとてもいいし、隣にある州立公園と連携しているため、大きな公園としても楽しめます。マンハッタンからフェリーでやってきて、レクリエーションをして過ごす、そんな楽しみ方ができます。

異分野から公園活用へ

続いて、学生時代をニューヨーク州のバッファローで過ごされたという、豊島区「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長の宮田麻子さん。

宮田さん:私自身はマーケティングビジネスの出身で、造園や建築とは全くの異分野の人間です。いくつかの民間企業で広報やマーケティング職を経験したあと、フリーランスとして地域活性のPRのお手伝いなどをしてきました。2年前に豊島区の民間公募で今のポストに採用されまして、「わたしらしく、暮らせるまち。」をコンセプトに住民の皆さんといろんなまちづくりに取り組んでいます。

豊島区 政策経営部 「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長 宮田麻子さん

豊島区では待機児童対策などは進んでいますが、子育てファミリー世代の定着率がまだまだ低く、また住民のアンケートからも遊び場への不満などが分かっています。そこで、区としては公園政策に力を入れて取り組んでいるのですが、私たちは特に「小規模公園」に注目して、こういうところに賑わいを取り戻すための取り組みを進めています。

稼ぐ公園として注目を集める南池袋公園(左上)をはじめオリンピックに向けて公園整備が進む

小規模公園を地域コミュニティの場へ

宮田さん3040年前にできた公園が、社会環境の変化に追いついておらず、また地域コミュニティの担い手の減少・高齢化などもあり、地域の公園を使うような機会が減ってきています。まだまだ使える余地がある公園を、地域のみなさんと一緒にコミュニティの場として再生していきたいと思っています。

現在、東池袋エリアでは区内事業者である良品計画さんとパートナーシップを組んで、パイロット事業を進めています。さらに今後、対象を区全域へ広げた「小規模公園活用プロジェクト」を進めていく予定です。整備でお金をかけるのではなく、今ある空間を生かしてできることを実践と実験を交えながらやっていきたいと思っています。

地域参加のきっかけをつくる情報発信

宮田さんの強みとする広報やマーケティングの観点から、豊島区ではこんな取り組みも。

宮田さん:地域参加のための場として「としまぐらし会議」を立ち上げました。住む人、はたらく人、そして行政も民間も一緒になってまちづくりをしていくための枠組みです。
また「としまScope」というWebメディアも運営しています。意識の高い人だけでなく、ちょっと興味はあるけど踏み込めなかったような人を地域参加へ後押しするような、情報のタッチポイントにしていきたいと思っています。

活用しつくされている!Bryant Park

昨年の夏、つまり豊島区で今のお仕事を始めてから、ニューヨークを訪問してさまざまな公園を見て回ったそうです。

宮田さん:ブライアントパークの活用しつくされている姿に衝撃を受けました!大人も遊べて、子供も楽しめる、あらゆる世代が楽しめる仕掛けがありますし、いろんな人が思い思いに過ごしている風景というのがとても好きでした。

また、90年代のニューヨークからは想像できない、夜の公園の賑わいにもとても驚きました。

民間の立場でまちづくりを支える

最後は、Groove Designs代表の三谷繭子さん。さまざまなパブリックスペースの活用やマネジメントに関わる、ご自身の活動についてご紹介いただきました。

三谷さん:前のお二人と明確に違うのは、私自身は民間でまちづくりを支援する立場であることですね。都市計画コンサルタントを経て、昨年都市環境デザイン事務所を設立しました。これまで、土地区画整理事業や公園のプランニング、住民と一緒に公園の管理運営の場作りなどに取り組んできました。

Groove Designs代表、ソトノバ副編集長 三谷繭子さん

Groove Desingsとして独立した今は、「都市での豊かな経験を通じてまちや人生を愛する人を増やす」ということをテーマに取り組んでいます。あるワークショップでは、街の中に自分のサードプレイスを見つけることをテーマに、公園もそういう場所になり得るのではないか?みなさんと一緒に考えました。

また、公園をはじめとする公共空間の使い方から、街を変えていけるのではないかという仮設をもとに、地域の課題のためにパブリックな空間を使っていくことができないか社会実験などを通じて考えています。

公園への“関わりしろ”を設計する

三谷さん:日本にはすでにたくさんの公園がありますが、作る過程の中で、できたあとのマネジメントまで考えられていないところが多いのが現状です。私自身は仕事を通じてプランニングの段階から、維持管理のコストや体制まで一気通貫で考えていくことを大事にして取り組んでいます。

ある公園のプランニングからマネジメントプランの作成まで関わる仕事に関わった際、住民のみなさんから「公園を舞台にして自分の夢を叶えたい」という声があがってきました。ヨガ、お店、ドッグランなど公園をやりたいことができる空間にするためも、行政だけでなく市民が公園の管理運営に関われる仕組みを持つことで、行政としても活用に前向きになれると思いますし、そういうことに住民のみなさんに気づいてもらうことがまず大切なんだと思います。

公共空間の活用の情報を広めていく

お仕事とは別に取り組まれているというのが、メディアの副編集長としての活動。

三谷さん:近年では、規制緩和なども進み、公共空間の活用が増えてきていますが、そうした事例を知ることのできる場がなかなか無いことに課題を感じていました。活動をしている人にとっては自分のアクションを発信できる場もありませんでした。そこで、有志で立ち上げたのがウェブマガジン「ソトノバ」です。

コンセプトは「ソトを居場所にイイバショに!」

最初はメディアとして始まりましたが、現在はラボ(研究活動)やピクニッククラブとして実際のアクションを起こしてみたり、リアルなイベントで情報交換をしたりと、メディアからメディアプラットフォームへと進化しつつあります。

多様な人々が過ごす、Bryant Park

このイベントの1ヶ月ほど前、ニューヨークを訪問されていた三谷さん。そこで注目した公園を挙げていただいたところ、偶然にも宮田さんと同じブライアントパークでした。

三谷さん4月にニューヨークへ行き、さまざまなパブリックスペースを見たり、インタビューをしたりしてきました。中でも印象的だった公園として挙げたいのは、ブライアントパークです。この公園には、あらゆるタイプの人がいました。
たとえばこの写真の左側は、ホームレスの方が自分が持つ看板を作っているところです。安全性の観点から排除の方向もありますが、ブライアントパークにはこんな風景がとても自然にありました。

多様な人の多様な過ごし方が印象的

他方ではビジネスマンが作業をしていたり、同じ公園のなかでこれだけギャップのある人たちが過ごしていることがとても印象的でした。

強みを活かして公園を共創していく

すべてをお伝えしきれてはいませんが、特徴的な取り組みについて抜粋してご紹介させていただきました。
島田さんのお話では、ニューヨーク市の制度や手法の先進性への関心が高かったようです。個々の手法そのものも参考になりますが、その前提には明確な目的意識のもとで、達成したいことに対して技術や仕組みを柔軟に取り入れていくことが重要なのだと感じます。その点で、豊島区の宮田さんは、公園管理の部門ではない俯瞰した立場だからこそ、民間企業とのパートナーシップ協定や、メディア運営など、広い視野で解決へのアプローチを取り入れていることが印象的でした。同様に、三谷さんのように民間ならではの客観的な視点や立場を活かして、行政と住民だけでは見えづらい課題を提示していく、あるいは一緒に解決していくことも含め、多様な主体がよりよい公園づくりや活用のための技術や知恵を出し合っていくことが求められるのだと思います。
今回、経歴やスキル、そして現在の公園へのアプローチに至るまで、三者三様のお話でした。これが少しでも新しい視点を知るきっかけ、視野を広げるきっかけにつながっていれば幸いです。

次回は、プログラム後半の座談会の内容をレポートします。

Written by 梅村夏子(PARKFUL編集部)
好きな公園:木場公園、清澄庭園
ふらりと行った公園で生まれる偶然の出来事や出会いを楽しむのが好きです。

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