本記事は一般財団法人公園財団の運営する「公園文化 WEB」からの記事提供でお送りします。今回は「公園管理運営『チャレンジ!』しました」のコーナーから幻の青いケシを育てている「国営滝野丘陵すずらん公園」の紹介です。
国営滝野すずらん丘陵公園(以下、滝野公園)は、札幌市南区にある国営公園です。約400ヘクタールの敷地の中に大型遊具や森を歩く散策路、花畑があり、年間50万人以上の人が訪れます。
特に花には力を入れており、「花とみどりのある北のくらし」をテーマにしたカントリーガーデンではスズランやライラックなどの花が楽しめる他、ラベンダーやクロッカス、イングリッシュブルーベル、滝野公園で生まれた青いビオラ等、様々な青い花を中心に、4月から7月に「滝野ブルー」として楽しむことができます。
今回は、ヒマラヤの青いケシ「メコノプシス・グランディス」を育てている高橋理さんにお話を伺いました。
青いケシを公園の目玉に
ー なぜ青いケシを育てることになったのですか?
高橋さん:北海道の花というと、ラベンダー、ライラック、ハマナス等が浮かぶと思いますが、滝野公園では、他の公園にはない目玉になる植物をカントリーガーデンに植えたいと考えていました。
ある時、カントリーガーデンを設計し植栽計画を立てた(有)緑花計画の笠康三郎氏から、札幌市内にあるナーセリー(苗木場)で青いケシを育てているという情報を頂きました。青いケシ「メコノプシス」は、西ヨーロッパから中央アジアにかけて自生する植物で、自生地の一つであるヒマラヤでも秘境でしか見られない、幻のケシと言われています。このケシは栽培方法が難しいと言われていますが、話題性や青い花の美しさから、カントリーガーデンの目玉としてふさわしいと考え、滝野公園で栽培にチャレンジすることにしました。
みんなで取り組んだ、試行錯誤のケシ栽培
ー 栽培が難しいとのことですが、どのように取り組んだのでしょうか?
高橋さん:2001年5月に札幌市内のナーセリーから苗を購入し、滝野公園カントリーガーデン内に2品種36株の青いケシを試験植栽しましたが、その生態、栽培方法については不明なことばかりで、植えた苗は次々と弱っていきました。そこで、自生地の環境や気候を参考に栽培を行うことにしました。
まず思い当たったのは、日当たりが良すぎる点でした。そこで、高木の陰になる場所へ移植したところ無事に開花してくれました。青い花を見た時は、ホッとすると同時に、青の美しさに感動した事を今でも覚えています。その後も自生地の環境と気候を参考にしたり、植栽計画を立てた笠氏に相談するなど、土壌や潅水頻度を検討しながら青いケシの栽培をしてきました。
手さぐりで栽培を続け、青いケシがお客様から注目されるようになってきた2007年。公園の花をお客様に案内するフラワーガイドボランティアが、一部の花の維持管理作業をしてくれることになり、青いケシに対しても細かな手入れが行われるようになりました。これにより、2010年頃から株が充実し始め、安定した開花が見られるようになってきました。
これらは笠氏の指導とフラワーガイドボランティアのおかげであり、この場を借りて感謝の意を伝えたいと思います。
滝野ブルーの感動を多くのみなさまに
ー滝野公園の青い花は今後も続けていくのでしょうか?
高橋さん:2013年頃から滝野公園では、4月から7月に「滝野ブルー」としてラベンダーやイングリッシュブルーベル、滝野公園で生まれたビオラなど様々な青い花をお客様にお楽しみいただいています。これらの中で青いケシは、1・2を争うほどきれいな青い花を咲かせますが、気難しさにかけてはナンバーワンです。潅水時に花びらに水が当たると花びらは変色してダメになってしまうこと、土壌のpHによって花の色合いが違ってくることなど、栽培開始から15年以上経った今でも学ぶことはたくさんあります。
また、ここ数年の夏の異常な暑さにより、道内のナーセリーでも苗立てが上手くいかず、補植用の苗を入手できない年もあります。しかし「青いケシ」の人気は高まっているため、今後は更に工夫を重ね、規模を広げていきたいと考えています。
初めて公園で咲いた花をみた感動を胸に、青いケシの栽培に取り組み、多くのお客様に「青いケシ」及び「滝野ブルー」をお楽しみいただきたいと思っています。
PARKFUL編集後記
四季折々の植物は公園の大きな楽しみの一つ。もともとある自然を活かした公園もあれば、この滝野すずらん丘陵公園のように、スタッフの方々が来園者のみなさんを楽しませるために手塩にかけて育てた植物こそ、人の手の加わった公園ならではの魅力とも言えます。ぜひ開花シーズンをめがけて遊びに行ってみてはいかがでしょうか。(PARKFUL編集部)
公園文化WEBは公園を楽しく使い込んでゆく市民と、公園管理に携わる人のための、公園や緑花文化に関する情報サイトです。
http://www.midori-hanabunka.jp/