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【ピクニック座談会 #02】 小さな公園を考える。 |市民参加へのアプローチ|

レポート 2019.10.02

「小さな公園を考える。」というテーマのもと、日本とニューヨーク、民間と行政という異なるかたちで公園づくりに携わる3人の会話の中から、公園づくりのヒントや可能性を探る企画。今回は活用を実現するための市民参加のアプローチについての話題へ。

宮田麻子さん(左):豊島区 政策経営部 「わたしらしく、暮らせるまち。」推進アドバイザー
三谷繭子さん(中央):株式会社Groove Designs代表取締役
島田智里さん(右):ニューヨーク市公園局 都市計画、GISスペシャリスト

ワークショップでの市民のニーズの引き出し方

宮田: 公園づくりのワークショップなどで、「何が欲しい?」と聞くと、あれが欲しい、これが欲しいとなって幕の内弁当のような全部入りの公園になってしまうので「したいこと」について聞くようにしています。与えられるのでなく、実際に公園を利用するみなさんが主体的に公園づくり(整備のその先も含めて)に参加する場をどのようにデザインしていくかがとても重要ですね。

島田: 私の個人的な意見ですが「公園で何がしたい?」と問うと公園だけがターゲットになるので、「地域にどんな公共の場が欲しい?」と投げかけて、地域や住環境の視点から公園空間の在り方を絞り出すのも良いと思います。自宅、職場や学校以外にどんな空間があれば暮らしやコミュニティが豊かになるのか、そう考えると地域に調和した公園がイメージしやすくなります。利用目的を特定した建造物とは異なり、様々な目的をもった多様な利用者が共存できる空間が公園。そういう見方をすると公園に対する意見も異なってくるかもしれません。

宮田: その通りですね。ワークショップの進め方もどういう問いの投げかけをするかが手探り状態で最初は公園自体にフォーカスしがちでしたが、やはり地域全体のことを聞くようにしています。地域の困りごと、したいこと、地域に何があったら良いのかっていう問いの中でその答えは公園だけではないケースも多いですね。

島田: 公園に限らなくても良いと思います。例えば、道路の歩行者天国では、構造的には公園ではなく道路空間ですが、公園のような利用ができるようになっています。管理側は別の話ですが、一般の利用者は公園、広場、道路空間など明確な定義が曖昧でも良いので、このような公共空間をもっと積極的に利用し、使い慣れていけばこういった公共空間がもっと身近な存在になるのではないかと思います。

宮田: 管理者が官=行政である公共施設や空間以外にも民間管理の多種多様な空間が公園や広場のようなパブリックスペースの役割を担うケースも増えていますよね。

選択肢のひとつとしての公園であるという視点

島田: 例えば、普段ビデオゲームを全くしない場合、自分一人で情報を集めて突然始めよう!とはなかなかなりませんよね。これまであまり知らなかった物に興味を持つ時って、口コミや魅力的な宣伝など、何らかのきっかけがあると思います。公園も同じで、管理や利活用でより多くの市民参加を呼びかける場合、これまで公園に興味がなかった人も対象にしていることを念頭に呼掛け側にも努力が必要だと思います。どうしたら普段公園を使わない人が公園に目を向けるか、参加のきっかけ作り、そういった視点でソリューションを探るのも大事だと思います。わかりやすい情報提供や、市民に身近に感じてもらい参加のモチベーションに繋げるなど…

宮田: 街の中のカフェなのか、家を出たくない人はゲームなのか、など多種多様な行動、選択肢の中で公園に行くという選択肢をとるので、市民のニーズや市民が生活の中でその公園をどう捉えているかが大切。公園という場所をなんとかしたいと思うあまり、それを考えられていないことがあるように思います。使われていない公園があって何がなんでもインフラを使いましょうみたいになってしまい利用者目線ではないですね。

三谷: そうですよね。公園が自分の生活、一連の行動の一部に少しでも触れていないと行かないですね。

生活動線上にある公園からの市民ニーズへの気づき

宮田: この西巣鴨二丁目公園は地域の人たちにとっては行事以外はあまり利用することがない公園で、目の前には区の施設があり、近くには商店街や公立アパートがあります。砂場の前に硬い座りにくいスツールがあるくらいで、座り易いベンチもない、あまり滞在型とはいえない公園です。

区の施設の利用者はヨガやカラオケなどの教室に通った後、この公園は使わずに帰ってしまう。ここで1日、公園について考える井戸端会議をしたときにコーヒーを振る舞いました。

そうしたら公園内の数少ない椅子を半分ずつわけあって座っている光景がありました。そこでこんなに座る場所ないんだという気づきもありました。ステップ遊具にみんな座って、コーヒーを飲むみたいなちょっとしたお茶会になっていました。

コーヒーを振る舞った日の西巣鴨二丁目公園の様子

島田: 椅子がなければ切り株を使う、いいですね。利用者が一時的に代用できるものを見つけて、使えるよう工夫するのはニューヨークでも時々みかけます。そして更に必要に応じて設置を要求、数を増やしていく。本当に好きなものや使いたいものであれば、ベストな状態でなくても使おうと思いますし、公園を快適に使えるように工夫している人がいる、自分も参加して声を上げてみよう、という雰囲気があることが改善への道を縮めるのに繋がると思います。

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(#3へ続く)
次は、公園づくりにおけるソフトとハードのあり方についてフォーカスして議論が展開されます!

Written by Hiroko(PARKFUL編集部)
好きな公園:新宿御苑、富山運河環水公園、チュイルリー公園(パリ)
どこにいっても誰もが自由に入れるのが公園。全国・世界各地の旅先で公園を訪れ、見比べるのを楽しんでます。

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