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「もっとやれる!日本の公園」開催レポート(3)座談会編

レポート 2018.07.02

5月17日に開催したPARKFUL主催トークイベント「もっとやれる!日本の公園 〜日本のニューヨークの視点でこれからの公園を語る〜」開催レポート、第3回はプログラム後半の座談会の様子をお伝えします。

レポート第1回、第2回はこちら。

はじめに:座談会の進め方

今回の座談会は、会場全員参加型のプログラムとしました。参加者のみなさまには事前に◯✕の札を配布。ステージから投げかける公園にまつわる質問に対して、会場のみなさまと登壇者の3名に一斉に札を上げていただき、その回答の状況も踏まえながら質問に関するトークを進めて行きました。回答状況は写真に記録して、イベント終了後に集計。その回答結果もあわせてご紹介していきます。本レポートをお読みのみなさまも、自分は◯✕どちらか?考えながら読み進めてみていただければと思います。

市民として、公園利用者として

梅村:ここからは、コトラボの梅村が進行させていただきます。ではまず最初は、登壇者のみなさんも会場のみなさんも同じ一市民として、こちらの質問です。

質問1「プライベートでも普段から公園に行く」

梅村:圧倒的に◯が多いですね。登壇者のみなさんも◯です。

島田さん:職場がセントラルパークの目の前にあるので、お昼休みに公園に行く事が多いですね。それから、ニューヨークの公園は通り抜けて歩けるところが多いので、とくに目的がなくても、通勤途中に公園の中を通ったり、帰りにふらっとお茶でもしようかなと立ち寄ることもあります。

宮田さん:私は◯と✕、半々…ですね。今の(公園活用)プロジェクトに取り組む前は、公園は通り過ぎてしまう存在でした。でも、今は公園が気になって気になって仕方がないです。区内に160もあるので、街を歩けば公園にあたりますしね。

三谷さん:やっぱり、✕にします(苦笑)人と待ち合わせる時に公園を使ったりはしますが、日常生活で自分や家族との生活ではあんまり行かないですね。

質問2「公園に行っても、正直やることがない」

梅村:さきほどと似たような質問にはなりますが、ちょっと◯が増えた気がしますね。

島田さん:正直、これまでこのような質問を考えたことがなかったですのが、改めて何しに行っているんだろうと考えてみると、私の場合ニューヨークは生まれ育った街ではなく新しい街なので、公園のような場所が自分にとって社会との接点になっており、特に何かをしに行くというよりは、人がいる所に行きたいという感覚で行っていますね。

梅村:なるほど、面白いですね。宮田さんのお話の中では公園で「できること」を考えていきたいというお話もありましたが、いかがでしょうか。

宮田さん:駅周辺の大きい公園と、なんとなく暮らしの中にある公園で多分答えが変わってくると思ってます。後者は、ともすれば通り過ぎるてしまうようなところですが、そういう公園でも「このようなこともできるんだよ」というサンプルを見せることで、使い方にも気づいてもらえるのかなと、最近考え始めてます。

三谷さん:何か明確な目的を持って行くというよりも犬の散歩のついで休んで行こうとか、ちょっと待ち合わせまで時間あるなという時に使える、そういう余白の部分がすごく大事なんじゃないかと思います。

梅村:それでは、少し踏み込んでみて、こちらの質問を。

質問3「公園のボランティア活動に参加したことがある」

梅村:お仕事で公園に関わられている方が多いと思いますが、ボランティアへの参加は少数派ですね。ニューヨークの公園ではボランティア活動が盛んのようですが?

島田さん:ニューヨークでは公園に限らず、一般的にボランティア活動が非常に多いです。一度行くと次も行かなければいけない、この場所限定での活動のみといった制限等がなく、今回時間があるから参加してみよう、とうことができるものが多いので気軽に参加しやすいです。また、行政と市民の間に入る団体が仲介者としてうまくコミュニケーションを取っているので助かります。

宮田さん:日本で公園ボランティアというと 旧来の方と若い方が分断されてる印象があります。関わりたいけど、どうやって関わったらいいか分からない方も多いのではないかなと。ニューヨークでの学生時代は、寮のコミュニティでボランティアの情報も得ることができたので、当時のほうが参加してましたね。

梅村:三谷さんは市民ボランティアの方と接することもあると思いますが、いかがですか。

三谷さん:仕事で関わった公園でボランティアをしたり、町会など地元の方が主体のボランティア活動に参加することもありますが、地域の方々もどうやったら新しい人が入ってきてくれるか悩んでいます。公園というフィールドがあっても、人との接点作りが課題ですね。

梅村:今のお話にもあったように、市民参加では担い手の高齢化という課題が多く聞かれます。ニューヨークのボランティア活動の中でヒントになりそうなことはありますか?

島田さん:ボランティアを募る、または参加することにあたり、市民がどういうことを難しい・ネックだと感じているのか、きちんと理解することが必要だと思います。なるべく参加プロセスを簡素化して、内容も専門技術がなくてもできることであると、ユーザーの視点に立って情報を伝えることが大事だと思います。

何のため、誰のための公園開発か

質問4「オリンピックは公園にとってチャンスだ」

梅村:会場は半々といった感じですね。登壇者はみなさん✕です。宮田さんのお話では、豊島区でもオリンピックに向けて公園整備が進んでいるというお話もありましたが。

宮田さん:駅周辺の公園はインバウンド含め、来街者もそれなりに見込んでいますが、住民にとってはオリンピックと公園が直結するというのはピンと来ないかなと。私は暮らしの部分で住民にそれがどう還元されるのか、その公園がどう使われて行くのかがきちんと議論されてこそだと思います。ハードレガシーになってはだめですよね。

梅村:いま東京ではオリンピックに向けて臨海エリアの開発が進んでいますが、ニューヨークでは、ブルックリンブリッジパークのように、ウォーターフロントの公園で、レクリエーションの一貫としてのスポーツが公園の中に定着していたのが印象的でした。観光資源としても魅力になっていますよね。

島田さん:今皆さんが素晴らしいと注目しているブライアントパークやセントラルパークは、以前は危なくて誰も近づかなかった場所でした。しかし、それに対し何とかしなければという地域の方々の危機感から、公園改善へ努力、そして行政を動かす事になっていったものです。それが結果的に観光地ともなり、地元の人にも観光客にも使ってもらえる長期的な成功になったというパターンです。それとは逆に、短期的な効果を見込んで作った公園が、必ずしも長期的に地域から支持されるとは限らないのではないかと思います。長期的に続いていくものは、地域から、そして地域と一緒に始まらないといけないと思います。

三谷さん:長期的な維持管理のスキームや新たなルール整備など、オリンピックをきっかけに変化のための議論が起こるのは良いことだと思います。ただ、使い方の面では、オリンピックでイベント的に消費された後、残った公園は誰が使って行くんだ、という懸念はあります。そういう日常の使い方の議論もありながら、日本人のライフスタイルのなかに公園使いが取り入れられていくといいと思います。

質問5「ニューヨークと日本(東京)の違いは大きいと思う」

梅村:会場のみなさんは違いを感じているようですが、島田さんは✕を上げていらっしゃいますね。その心は?

島田さん:日本の皆さんは日本に対して厳しいですよね(笑)。ニューヨークは以前は危険で夜6時以降一人で電車に乗れない、公園にも行けないという、基本のベースがとても低いところから始まって今に至っているので、現在との変容はとても大きいです。日本は元々安全で美しく、ベースラインが高いので、現状のレベルを維持するだけでも大変。さらに良くしようと試みても、目に見える変化の差が小さくて実感しづらいのかもしれませんね。
ニューヨークはようやく安全に公園を楽しめる、日本と同じ土台に立ったのかなと思います。その上で最終的に賑わう、価値のあるスペースを作りたい、地域を良くしていきたいという想いは一緒だと思います。

宮田さん:卑屈にならなくていいってことですね(笑)。たしかに、公園そのものは変わらないのかもしれないですね。ニューヨークの公園は、ユーザーの公園使いがうまいから、よく見えるのかもしれません。私たちも、もっとこういう風に使えるんだって、行政も一緒に住民と考えていかないといけないですね。

三谷さん:いま、“公園を使わなきゃいけない”という雰囲気が蔓延している気がするんですね。なんで使うんだっけ?というのを、日本は考えた方がいいんじゃないかなと思ってます。ニューヨークが課題を明確にしてプロセスを踏んでやって来たように、日本でもそれぞれの地域に大なり小なり課題はあって、そのためにこの公園はどう使っていったら良いかということを丁寧に考えながら、一つ一つの公園に向き合っていけるといいのかなと思います。

公園に関わる当事者として

質問6「日本の公園はもっとやれる!と思う」

梅村:ありがとうございます、ほぼ、◯ですね。登壇者のみなさんも◯を上げていらっしゃいます。

島田さん:公園を作るのも使うのも「人」です。人が頑張らなければ、公園が“やれる”というものではないと思うので皆さんから頑張りましょう!

宮田さん:民間から行政に飛び込んできて印象的だったのは、公園行政の人間が、公園が迷惑施設で管理や苦情対応に手いっぱい、活用や住民との対話をあきらめていること。対話や活用の新たな手法を取り入れるなど、マインドからもっとポジティブにしていかないとと思います。

三谷さん:自分にも「できる」と言い聞かせてます(笑)やれることはすごくたくさんあって、でも市民同士も、市民と行政、民間と行政も、まだ繋がっていない部分がたくさんあると思います。そこのコミュニケーションをどうつくっていくかがポイントかなと思います。

島田さん:最後にもう一つ、海外で働く日本人として伝えたいのは、これから色々な目標を立てる中で、データ利用はとても重要だと思います。まず何をベースラインにするか把握すること、そしてしっかりデータを集め、分析し、それをヒントにして取り組んでいく、そういうことがこれからの時代どんどん必要になってくると思います。今は、そのための技術もあるし、そういった情報の発信や共有するためのメディアや媒体もあるので、多くの事を連携させていくことによって、より信憑性のある政策も立てられるのではないかと思います。

多様な視点で公園を考える

議論を深めるところまでは行きませんでしたが、ただ話を聞くだけでなく参加者のみなさんも一緒に考える場になればと思い、このような企画としました。今回、事前に22の質問を準備していましたが、取り上げることができなかったテーマも含めて、公園にはまだまだいろんな切り口があります。今回のようにニューヨークからの生の声はなかなか聞くことができないかもしれませんが、こうして同じテーマに対してみんなで考えを述べ合ってみるというのはいつでもできることです。自分が、みんなが、公園についてどう思っているのか、シェアする時間を作ってみてはいかがでしょうか。まずは質問を考えてみるだけでも、普段と違った視点で公園を見つめるきっかけになります。また、仕事で公園に関わっている方は、市民だったらどうか?という自問もぜひお忘れなく。

次回、レポート最終回ではアンケートにご記入いただいた登壇者への質問とその回答をご紹介させていただきます。

Written by 梅村夏子(PARKFUL編集部)
ふらりと行った公園で生まれる偶然の出来事や出会いを楽しむのが好きです。

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