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公園の非日常を楽しむ、西川緑道公園の「満月BAR」

インタビュー 2018.10.26
公園文化WEB 連動企画

本記事は一般財団法人公園財団の運営する「公園文化 WEB」からの記事提供でお送りします。今回は、岡山市中心部の西川緑道公園で開かれる飲食イベント「満月BAR」の実行委員会代表を務める武田悠佑さんのインタビューです。(※本インタビューは2016年のものです)

西川緑道公園(岡山市北区)では、4月から10月の間、月1回、満月の週の土曜の夜に「満月BAR」が開催されます。「満月BAR」は、満月の夜だけ公園がBARになるイベントで、非日常の空間が人気を呼び、毎回約500人ものお客さんが訪れます。立ち上げ時から実行委員会の代表を務める武田さんに、西川緑道公園で「満月BAR」をはじめたきっかけと、その活動内容についてお話をうかがいました。

満月BAR代表 武田悠佑さん

「満月BAR」誕生につながった出会い

武田さん:「満月BAR」とは、満月の夜に月灯りの下、お酒と料理を楽しむ大人のためのイベントです。神奈川県鎌倉市で2009年6月に始まった文壇バーにちなんで惣菜店がはじめたイベントが発祥とされ、その後仙台、福岡、兵庫県赤穂市など全国に拡大して行われています。

西川緑道公園で「満月BAR」をはじめたきっかけは、市内で街づくりに取り組むNPO法人*タブララサ(以下、ラサ)に参加したことからです。(*タブララサとは、ラテン語で「白い板」「白紙の状態」という意味)ラサは、20~30代の若者グループを中心に、エコの要素を取り入れたさまざまなイベントで街づくりに取り組んでいるNPO法人です。ラサのイベントの一環として2006年から開催されているのが「西川キャンドルナイト」。毎年ゴールデンウィークに西川緑道公園をろうそくでライトアップし、公園が幻想的な空間となるこのイベントは、約1,000人の市民が集う西川エリアの風物詩となりました。

西川キャンドルナイト

ある時、ラサの河上直美理事長らとともに、兵庫県赤穂市で開催されている「満月バー」を見に行く機会がありました。会場は、赤穂市内のラーメン屋の駐車場(当時)で、運動会などで見かけるようなテント。季節は2月。地域の有名シェフや多彩な趣味・特技を持つ地域住民たちが集い、それぞれ得意分野を生かした「満月バー」は、しっかり街づくりの形となっていました。小さな家庭用のストーブがいくつかあるだけでしたが、不思議と暖かく、幸せに満ちた空間でした。

赤穂市の「満月バー」の帰り道、ラサの河上さんから「武田君、西川で満月BARをやってみない?」と誘われました。「人生は一度きり、自分なりにやれることをやってみよう」と思ったこと、そして赤穂市を一緒に訪れていた池田一晃さんが全面的に協力してくれるということで、私は「満月BAR」の準備に取り組むことになりました。

原点となった「赤穂 満月バー」(写真提供:赤穂 満月バー)

満月BARプロデューサーの池田さん(左)

満月BARのプロデューサーである池田一晃さんは、西川緑道公園沿いで青果店(店名:池田促成青果ラボ)の3代目オーナー。以前から西川エリアの街づくりに取り組んできた人です。多くの飲食店とのネットワークをもち、自ら食に関するイベントを開催して、西川エリアの店舗をPRしてきましたが、年に数回のイベントだけでは街づくりとは言えないのではないか。西川緑道公園沿いを中心とした街の中で、定期的に人が集まる活動はできないだろうか…と模索していたころ、池田さんは雑誌で「満月BAR」の存在を知り、プロデュースすることになったのです。

おしゃれにこだわった「満月BAR」

武田さん:どうせ取り組むのなら、西川緑道公園の自然豊かで水辺の景観を生かしたおしゃれで本格的なBARにしたいと考えました。良いBARには素敵なお客さんがおしゃれをして来てくれる。そして我々スタッフが最高のおもてなしをする。そんなイメージを描きました。野外であっても重厚なBARであるという設定で、チケットは当初5,000円にしました(2016年から2,500円に変更)。

2012年6月、満月の土曜日の夜に記念すべき1回目の「満月BAR」はオープンしました。当初、私たちは20~30代の若い女性客を対象としていましたが、最初に訪れたお客様は、50~60歳代の中高年の女性たちでした。山陽新聞に掲載された告知を見て来てくれたのだと思います。初回は約200人のお客様が来てくれて、大きな手応えを感じました。

多くの人で賑わう満月BAR

「満月BAR」の営業時間は17:00~21:00。お酒はドリンクブースを作り、西川エリアに店舗を構えるお酒のプロが参加してくれて、ワイン、カクテル、日本酒、ビールを提供。BGMはジャズを中心とした洋楽がスピーカーから流れ、年に数回は岡山県内の音楽家によるライブ演奏もあります。ミュージシャンもボランティアでの出演です。

料理は協力してくれる5店舗(イタリアン、スペインバル、シーフード、居酒屋)のメニューを揃え、注文を受けたら、各店舗に電話で注文します。出来上がるとお店の人がお店で提供するのと同じように食器に盛り付けて持ってきてくれます。一夜で約500人が来店しますので、スタッフはお客さんのご案内や食器の上げ下げなどに大忙しですが、皆、笑顔を絶やさず活動しています。

「満月BAR」は立食スタイルのため、当初はすぐにお客さんが移動すると想定していたのですが、川沿いのロケーションが気持ちをリラックスさせるのか、長く席に留まられるお客さんが多くいらっしゃいます。

ジャズやボサノヴァなどのライブ演奏

大学生に引き継ぐ「街づくり」の思い

武田さん:2012年にスタートしてから、これまで約160人が「満月BAR」の運営スタッフ(以下、スタッフ)として関わりました。スタッフは、ボランティア活動なので登録制にはせず、自由に関わってもらっています。

スタッフは20代、30代の社会人や大学生で、様々な業種・学部の感性豊かな面々です。何よりも活動そのものが楽しいと思える人たちです。口コミなどを通じてスタッフが増え、現在(2016年)、広報、ディレクション、ライブ、会計、備品、パーティーの6チームが構成されるまでになりました。開催当日必要な30人のスタッフは、Facebookやツイッターで呼び掛けて集めます。

「満月BAR」のFacebookは、当初私が担当していましたが、徐々に学生に任せるようになりました。また、学生だけで結成した「満月BAR 学生チーム」が、独自に活動しています。いまや大学生は「満月BAR」の戦力となっていますが、街づくりの目的や街が抱える問題点などが見えにくいこともあります。接客マナーの指導も含め、「満月BAR」の協力店舗との交流から公園の清掃まで、活動を通して街づくりの思いを伝えています。とはいえ、学生には失敗を恐れずにさまざまなことにチャレンジしてほしいと思っています。活動を通じて経験する苦労は、いずれ社会で大いに役立つことでしょう。

満月BARの運営スタッフ

西川緑道公園をまちづくりの起点に

武田さん:緑道公園を管理する岡山市(都市整備局庭園都市推進課)では、市民が西川緑道公園を活用して実施するイベントなどを公募、認定する事業「西川パフォーマー事業」を2010年度から始めました。それによって西川緑道公園では、より一層、活発にイベントが行われるようになりました。「西川パフォーマー事業」の目的は、西川緑道公園とその周辺の、街のにぎわいと魅力を高めることです。認定された事業者側のメリットは、イベントを行う際の届け出手続きが不要になるだけではなく、実施するイベントの告知(市のHPやチラシなどで)や公園使用料の免除、音響、テント、イスやテーブルの提供の支援が受けられることです。

「満月BAR」は、西川緑道という立地を100%生かしたイベントです。岡山駅から徒歩5分圏内の中心部。緑道沿いには多くの店舗協力者がいて、その店舗からデリバリーが可能なこと。そして何より夜風が心地よい水辺のオープンスペースという舞台は今のトレンドにピッタリです。最近は若い女性や会社員、市外からも多くの人が来てくれるようになったので、「満月BAR」は街の活性化に貢献できていると思っています。

西川緑道公園で「満月BAR」を実施するようになって思うことは、公園は、活用すればするほど、きれいにできる場所だと感じました。

西川緑道公園筋は車の往来が激しいなどの課題もありますが、「満月BAR」などの好事例から、将来的には西川がまちづくりの特区になって、車の規制などができるようになることを期待しています。西川緑道公園を中心に、多くの飲食店という点と点が「満月BAR」に訪れる大勢の人を結んで面になりました。今後もその面をさらに広げていきたいと思います。

普段の西川緑道公園

2018年最後の満月BARは10月27日(土)の開催です。
詳細は下記のホームページ、SNS等でご確認ください。

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記事提供:公園文化WEB(PARKFULパートナー)
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