2月12日(火)に開催された名古屋市公園経営シンポジウムのレポート、後編ではプログラム後半に行ったパネルディスカッションの内容をお伝えします。
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みんなで考える次世代の公園活用
今回のパネルディスカッションでは、具体的な公園活用アイデアについて、そこから期待できる効果や課題などについて登壇者の皆さまにご意見をいただきました。また参加者の皆さまには2つの視点を頭の片隅に置きつつ、お話を聞いていただきたいとご提案しました。
1. 公園に行きたくなるか
2. 活用に対して自分が貢献できそうか
参加者のみなさまには、事前に用意した20の活用アイデアリストに対して、上記2つの視点で◯△✕をつけていただきました。この結果も見ながら、パネルディスカッションの内容をお伝えしてきたいと思います
公園 ✕ アート がもたらす効果とは?
コトラボ 梅村(以下、梅村):最初は「1公園1パブリックアート」というアイデアを取り上げてみたいと思います。豊島区の取り組みの中では実際にトイレとアートを掛け合わせるというものがあったと思いますが、そこにアートを取り入れた意図や効果があればお伺いできますでしょうか。
豊島区 宮田麻子さん(以下、宮田さん):そもそものアートトイレの目的としては、暗い怖いイメージのトイレを明るく親しみやすくする、といった課題解決にあります。アートとデザインの違いがあるとして(アートは表現的なもの、デザインは課題解決)、アートトイレの取り組みはデザインに近いのかもしれません。また、取り組みのプロセスやその存在が住民と対話するきっかけには確実になっていると思います。
森ビル 中裕樹さん(以下、中さん):広場を活用する際、パブリックアートの存在が気になることも正直あります。しかし、私たちは東京を世界で1番の都市にしたいと考えており、その視点から世界の公園をみると非常に象徴的なアートがあったりして、それを目指していくということを考えると、アートにはその場所を特徴づけ、街の価値を高める大きな役割があることに気づきます。私たちもそのように、空間に特徴をもたせて他とは違うということをしたいと思い、アートを設置しています。
クレイドル 高井譲さん(以下、高井さん):今関わらせていただいている駅前広場のプロジェクトでは、観光協会の方々がトリックアートをやられたのですが、市民の方々からの反応はとてもよかったです。アートを通じた賑わいづくりができるなと感じました。
名古屋市 緑地地活用室 藤井室長(以下、藤井):私がやっておもしろかったかなと思うのは、東山植物園でやった、みんなで大きい流木アートを作ろうというイベントですね。来園者のみなさんが、流木を組み合わせて一つのアートにしていくという形でやったのですが、いろんな人が参加するので、自分が参加したあとも最終的にどうなったかなとまた見に来ていただけるという効果がありました。こうした体験型のアートづくりもおもしろいと感じました。
「1公園1パブリックアート」参加シート回答集計
「行きたくなる」「参加・貢献できる」に差が付きづらかったのは、質問自体の分かりづらさもあったかと思いますが、「行きたくなる」つまり魅力的な活動に対しては積極的な参加・貢献姿勢につながりやすいという解釈もできるかもしれません。
公園のボランティア活動を支えるしくみ
梅村:登壇者のみなさまで、ディスカッションしてみたいアイデアがあれば選んでいただければと思いますが、いかがでしょうか。
中さん:では「公園ボランティア婚活」について。私は森ビルで働きながらグリーンバードという清掃活動のボランティアに取り組んでいるんですが、その活動は「朝合コンしようぜ」と言って人を集めているんです。素敵な人がいるから清掃しようよって言って人を集めてるんですね。ふざけている感じに聞こえるかもしれませんが、まちの担い手やまちに関わる人を増やそうとしているんです。そういう参加のハードルを下げることが非常に大切だなと思っています。公園の活用やまちづくりをするときに、楽しいからどんどん人が増えていくという風にしたい。「婚活」がいいかは別として… 若い人が入ってこれる仕組みが非常に重要だと思っています。
宮田さん:まちづくり、地域参加のハードルを下げるって、本当にそれが鍵だなと思っています。今の町会の70〜80代の方々も活動を続けていくのは難しくて、若い方に入ってきて欲しくていろんなイベントをするんですね。でもみんなお客さんで、その時は参加するんだけどそうじゃない時は帰ってしまう。だから先ほど中さんがおっしゃった面白い仕掛けとか、若い方も継続的に続けられる仕掛けってすごく大事だなと。今、町の長老たちとの話でずっと話題にのぼっていることですね。
梅村: 今回パネルディスカッションのお題を事前に参加者の皆さまからもを募っていたのですが、その中にボランティアの関わり方についてご意見が含まれていたので、ご紹介をさせていただきます。ハーブ園の維持管理のコストの課題がある中で、ハーブ園が見えるところにカフェを設置して、そこの利益をハーブ園に還元できないかというものでした。さらにハーブ園を運営するボランティアの方には、そこのカフェで使える回数券を渡したらどうかというアイデアがありまして、非常におもしろいなと思いました。
高井さん:これは素晴らしいアイデアですね。僕もこういうアイデアを形にするということを、現役時代から今でも仕事でやっています。ボランティア婚活など、こういうアイデアはすごく大切だと思いますが、ただこれを誰かにやってくれというのではなくて、市民のみなさんが自分たちでやってしまう、それを行政が支えるという形にしていくことが大切だと思います。
藤井:名城公園のトナリノという施設であがっている収益については、公園に彩りをということで花苗を購入し、花壇づくりに活用していただいています。最近は、名古屋市を代表する公園では市の負担で花を植えていますが、それ以外の公園でお花があるところのほとんどが、地域の皆さんにつくっていただいています。
「公園ボランティア婚活」参加シート回答集計
アートのアイデアと比較して、◯△✕が大きく割れる結果に。「婚活」というキーワードが当事者としてはかなり限定的でしたが、別途アンケート内のご感想・ご意見ではボランティア活動への関心や課題意識の高さが現れていました。
公園にも個性があっていい
中さん:1500の公園がこれから賑わってくるときに、それぞれが好きな公園や、場合によってはこの公園嫌いだから行かなくていいっていう公園など、バラバラになっていってもいいんじゃないかなと思うんです。ここにある20個のアイデアも、バラバラにいろんな公園で生まれたらいいなあと、そんな事を思いました。
藤井:市民の皆さまから頂く公園に関してのご意見は、少ない区でも年間3000件あります。解決できないところは禁止にするのが一番早いのですが、それでは禁止ばかりになって公園で遊べなくなってしまいます。地域の皆さまとの話し合いの中で、先ほどの花壇づくりなども出て来ていますので、少しずつ皆さま方も私どもも意識が変わって来ていると思います。
高井さん:私は市民の皆さんに企画書を作ってもらうんですね。以前、70過ぎの高齢の女性の方も、2週間くらいで作ってくれたことがありました。そして、行政はそれをサポートしていくと。主役は地域の市民の皆さまですし、その方が良いものができて成果が出ますね。
宮田さん:先ほど公園ごとに個性をもたせる、役割を持たせるとおっしゃっていたんですけれども、まさにそうだと思います。豊島区は密集してるので、公園と公園の距離が近いんですね。そうすると近くに同じような公園ばかりと言うよりは、遊具が欲しい場合もあれば何にもないほうがいいというニーズも出てきます。例えば、立派な遊具がある公園が隣接した区にあるので、遊具で遊びたいときはその公園に行って、こっちの公園の錆びた遊具は無くして、その分広いスペースにして… など、公園ごとにメリハリがあっていいのかなと。いきなりだと難しいので、少しずつ話し合いをしながらですが。いわゆる3種の神器、鉄棒・ブランコ・砂場が一律にありさらに老朽化していく中で、こうした議論も必要かなと思います。
参加シート 全アイデアの回答結果!
今回、各アイデアに対して「公園に行きたくなる度」「自分が参加・貢献できる度」の2つの視点で◯△✕を回答していただきました。その回答を、◯:5pt、△:2pt、✕:0pt として各アイデアごとの総合ポイントを算出。そのランキングをご紹介します。
多くの公園で取り組まれている「花壇」は公園の魅力を高める要素でありつつ、参加しやすい活動でもあることが伺えます。こうした活動は、より多くの方が公園に参加するきっかけとしても取り組みやすいのでは」ないでしょうか。一方で第2位の公園で「音楽ライブというのは、実例としてはあまり多くない印象ですが、このような高い関心を集める結果となりました。他にも「夜の野外レストラン」や「大人が遊べる遊具」などが上位に入っているのも印象的です。それぞれ、実現にはハードルもあるかと思いますが、「公園に行ってみたくなる」という気持ちを素直に形にすることで、今までにない公園の活用が見えてくるのかもしれません。
今回のディスカッションは、個別のアイデアの良し悪しについて答えを出すことではなく、考えるきっかけにしていただくことが目的でした。今回のディスカッションを通じて、さまざまに思い巡らせたアイデアへの意見や新しい展開を、ぜひ今後1500公園の活用につなげていっていただければ幸いです。