5/17に開催したトークイベント「もっとやれる!日本の公園」のレポート最終回。イベントのアンケートの中で、参加者の皆さまから登壇者の皆さんに向けてたくさんのご質問をいただきました。質問の中で、今回のイベントの趣旨に通ずるものや、複数の方からいただいたご質問などを中心に、登壇者の皆さまにご回答いただきました。
- 日本の公園で好きな公園はどこですか?
- 日本の公園が変わっていく(変えていく)きっかけを挙げるとすれば、何だと思いますか?
- 公園などのパブリックスペースを評価する際に、大切にしている視点・評価軸は何ですか?
- 公園利用者の潜在的なニーズや課題を発掘するためには、どのようなアプローチ・方法が必要だと思いますか?
- ボランティアへの参加のしやすさ、関心を持ってもらうための工夫、あるいは継続するための仕組みなどについて、実例やアイデアがあれば教えてください。
- 公園、パブリックスペースにおける「運動・スポーツ」のあり方について、ニューヨークや国内での面白い取り組みなどがあれば教えてください。
- 「公園で稼ぐ・儲ける」ということについて、どのように考えますか?
- ニューヨークでは、住宅街の中にある小さな公園は、どう使われていますか? またどのように管理されていますか?
- GISの管理運営における具体的な活用例や、より発展的な活用方法について、お考えがあれば教えてください。
留意事項:以下の内容は、回答時点(2018年6月)のものです。登壇者の皆様のご意見・考え方を断定するものではありません。また、島田さん、宮田さんのご回答は個人のお考えによるもので、各所属組織を代表したものではないことを、予めご理解ください。
Q1. 日本の中で好きな公園はどこですか?
島田さん
- 淀川河川公園(大阪府寝屋川市)
広大なエリアにアスレチックフィールド、遊技場、自然エリアもあり、様々なアクティビティが可能です。堤防沿いは散歩道としても利用されており夕日が綺麗! - 鴨川公園(京都府京都市)
京阪出町柳駅近くの鴨川沿いのデルタエリア。観光地の繁華街から若干北にあり、地元の人や近郊の大学生で賑わい、ピクニックも楽しめる川沿いの公園です。 - 東遊園地(兵庫県神戸市)
近年さらにPublic Spaceとしての活用が進み、芝生も導入され居心地の良いスペースになっています。駅からも近く、夏の間は週末に多くのイベントが開催されます。
宮田さん
- 肥後細川庭園(東京都文京区)
細川家の屋敷跡地をそのまま公園にした、神田川沿いの住宅街の中に佇む日本庭園式の区立公園。小高い山のような地形に深い木立や四季折々の草花が楽しめ、ところどころにベンチが置かれ、都心にいながら森の中のピクニック気分を味わえます。自宅から歩いてすぐということもあり、気分転換のため日常的にふらっと立ち寄る存在です。
三谷さん
- 洞峰公園(茨城県つくば市)
緑豊かで様々な人が思い思いに過ごしており、つくばの街を代表する気持ち良い公園。家族連れでのレジャー、近隣の散歩、デートなどあらゆるシーンで日常的に市民に親しまれています。学生時代によく訪れていた公園でもあり、遠方となった今でもまた訪れたいという気持ちになります。
Q2. 日本の公園が変わっていく(変えていく)きっかけを挙げるとすれば、何だと思いますか?
島田さん
公園を作る人・支援する人・利用する人の間で、公園に対する共通の認識を持つことが、きっかけの1つになるのではないかと思います。市民参加型のボランティア活動、情報共有、パートナーシップの多様性を認める等も、まずはお互いにコミュニケーションを取り合い、公園という共有スペースに対する共通の認識と目標を明確化することで、それに適した具体的な計画が立てやすくなるのではないかと思います。
宮田さん
公園という場所の運営に、行政、民間に加え、地域が主体的に関わる機会を増やしていくこと。公園は行政が作り、管理するもの、という意識から、住民・利用者が主体的に関わることで、公園で「○○してはいけない、出来ない」ことから、「○○したい、出来る」ことを増やしていくこと。
三谷さん
市民、行政、民間(企業、NPO等の中間支援組織含む)が互いに理解を深め、連携を密にすること。
また大きな視点では、地域ごとの事情に合わせて、都市計画の一部として公園機能の再配分をすることもきっかけになり得ると思います。
日本の公園は、これまで一律の配置基準によって設置されてきましたが、「誰でも使える」を重視した施設・空間整備によって、結果「誰も使えないor使わない」空間になっているものも多いです。公園は誰にでも開かれた空間であるべきですが、誰でも使える=ターゲットを設定しない場所づくりではなく、場所によって利用の方向性やコンセプトを定め、それに合わせたルールづくりなど、目的をもってデザインすることで地域生活と公園の関わり方が変わってくると思います。
Q3. 公園などのパブリックスペースを評価する際に、大切にしている視点・評価軸は何ですか?
島田さん
1つ目に、人がいて、その人たちがどのようにそのスペースを扱っているかです。ただたくさん人が集まっていても、乱雑に使われていたり利用者同士で不快感を抱くような場合は、公共空間として評価が難しいですが、個々人の使い方はそれぞれでも、多くの人が共存できるような使い方をしていれば、良い公共空間なのではないかと思います。2つ目に、人種、性別、収入、老若男女、車いす等のバリアに関わらず様々な人がいる場は、素敵なパブリックスペースだと思います。
宮田さん
その場所の利用者の属性や過ごし方の多様性。また、同じ公園でも時間帯や天候、季節によっていくつもの異なる表情を持っていることも観点のひとつ。
三谷さん
その公園を何度も訪れたくなるか、活動・居方・利用者の多様性、利用者視点の環境のつくりかた、周囲や都市生活への影響、等です。
Q4. 公園利用者の潜在的なニーズや課題を発掘するためには、どのようなアプローチ・方法が必要だと思いますか?
島田さん
公園利用者の調査も一つの手法だと思います。例えば、幾つかの異なるタイプ、サイズ、場所にある公園で、数値化できる基本的な公園利用者情報(利用者数、滞在時間など)に、答えやすい選択式アンケート調査で、公園利用の定量化を行い現状把握をする(ベースラインの設定)。そして具体的な希望や課題を探るための、答えに裁量ある調査を行い、データの比較分析する等。こういった調査が、公園利用者にとっても、公園について改めて考えるきっかけになればと期待します。
宮田さん
公園そのものの時間帯や天候、季節ごとのオブザベーションはもちろんですが、潜在ニーズの発掘には、周辺環境(立地、住宅・店舗状況、公共・商業施設など)のリサーチや地域課題の把握と公園の担えうる役割の仮説づくり、実践と検証の繰り返しだと思います。
三谷さん
公園内の様々なシーンの観察、聞き取り等の調査を通じて、データを取得・分析すること。そして、公園外のまちの課題やニーズを把握、連携することも必要だと思います。
Q5. ボランティアへの参加のしやすさ、関心を持ってもらうための工夫、あるいは継続するための仕組みなどについて、実例やアイデアがあれば教えてください。
島田さん
2015年のニューヨーク市の街路樹調査(参考:イベントレポート(2))では2200名以上の一般市民の参加がありました。まず、宣伝に覚えやすいキャッチフレーズ(「One(1),Two(2)、Tree(木)」等)を使用し、人目につきやすい駅構内等の交通機関にもポスターを設置しました。また、参加プロセスを容易にするために、ボランティア登録、調査方法、進行状況、参加団体等全てが一つのウェブサイトで見られるように工夫し、調査もタブレットを使いデータ入力を簡素化、現場で使える持ち運び簡単な折りたたみ式「樹種識別ガイド」を作ったり、調査後に結果データを一般者視点でデザインしたMapで公開するなど、参加者視点を意識してプロジェクトを進行したことで、これまで以上に市民の参加意欲が向上したように思います。
宮田さん
ボランティアが特別なことでなくなるよう、よりカジュアル参加しやすい入り口を増やすこと。(草むしりとコーヒーをセットで楽しむなど)
三谷さん
ボランティアが「楽しい」と思えるような工夫や、参加の動機付けをすることが大切だと思います。また、人間関係が問題になることも多いので、ファシリテーションができるボランティアコーディネーターを置くことも効果的だと思います。
Q6. 公園、パブリックスペースにおける「運動・スポーツ」のあり方について、ニューヨークや国内での面白い取り組みなどがあれば教えてください。
島田さん
アメリカでは運動やスポーツが生活の中にカジュアルに取り入れられているような印象があります。屋外や公園でのヨガ、ダンスレッスン等から、企業(JP MorganやNIKE等)が市と共催するマラソンや市内自転車ツアー等、初心者でも参加できるようなイベントが年中あります。
三谷さん
ニューヨークでは、ブルックリンブリッジパークなどのスポーツに特化した環境の作り方が参考になると思います。また国内の事例では、多目的に使える半屋外広場や、市民組織の管理するスケボー広場などを備えた「Waiwaiドームしもつま」が面白いと思います。
Q7. 「公園で稼ぐ・儲ける」ということについて、どのように考えますか?
島田さん
公園で稼ぐ、儲けるというのが民間に限らない所でも出ているのは、これまでにないユニークさだと思います。少し気になるのは、このフレーズの定義が曖昧なまま言葉だけが先走りする可能性があることです。「稼ぐ」というのが、公園空間を利用し利益を得て、それで行政の財政や裁量ではカバーしきれない部分を補い(または新しく始め)、公園/地域を良くするという意味であればそれはいいと思います。違う意味ならまず正しく理解したい。人それぞれ違う解釈があると誤解を生じたり、方針としては弱くなることもあるかと思います。皆さん公園を良くしたいという思いは同じだと思うので、明確な定義、その意図を行政、民間、市民の間で共有の理解を持つことが必要ではないかと思います。今後の挑戦は、この3者間のギャップを縮めることかもしれませんね。
宮田さん
稼ぐ、という概念には立場によって解釈があるかとは思いますが、行政側では、歳入・財源確保による持続可能な公園経営の観点からも、今後さらに重要になるのではと思います。ただ、立地やニーズによって向き不向きがあることも事実。住宅街などの街区公園では、ただそこにあるその存在が住民の憩いとなっている場合もあります。住民サービス、エリアの価値向上など様々な視点から、指定管理、協議会だけでなく多種多様な公民連携による公園経営が求められているのだと思います。
三谷さん
民間参入によって公園サービスの質が向上するのは良いことですが、集客装置で利用者の関心を惹きつけるのではなく、それを公園の管理運営費用等に還元する仕組みづくりや、パブリックな場の位置付けを維持するバランスが重要だと思います。
稼げる条件にある公園もあれば、そうではない公園もあります。民間が公園という気持ちのいい場所を使って、社会や都市のなかでどんな役割を担い利益をどう循環させるかを、突き詰めて考える必要があるのではないでしょうか。また、ナショナルチェーンの力を借りたとしても、そのお金をいかに地域の利益にするかを考えることも大切だと思います。
Q8. ニューヨークでは、住宅街の中にある小さな公園は、どう使われていますか? またどのように管理されていますか?
島田さん
ニューヨークでは貧富に格差があり、エリアによって公園の使い方や状態が異なります。住宅街にある小さな公園の幾つかは、長年リノベーションされておらず作りもシンプルな所もありますが、簡素なバスケットゴールしかない公園でも若者達に日常利用され、公園に対する需要が高い印象があります。現在CPIといった資本金を使って既存の、特にこれまで管理が行き届いてなかった公園を集中的にリノベーションする政策もあり、公平な公園づくりに努めています。
Q9. GISの管理運営における具体的な活用例や、より発展的な活用方法について、お考えがあれば教えてください。
島田さん
GISは、管理運営や色々な選定、決断をする為のツールとして利用されることが多いと思います。情報を重ね合わせたり統合し分析することで、情報の関係性をわかりやすく可視化することが出来るため、コミュニケーションの手段とも言えます。GISを利用するにあたり、問題提示を先にして、どうすれば答えに近づけるかという所で、それぞれに適したGISの活用法が見つかるのではないかと思います。ニューヨーク市の長期環境計画政策PlaNYCやOneNYCの場合、現状把握と今後の政策案の裏付けとして(目標のシュミレーションや明確化)広く使われています。また、情報を随時更新することができるので、情報管理にも便利です。(参考:イベントレポート(2))